ソラアユム

三体のソラアユムのレビュー・感想・評価

三体(2023年製作のドラマ)
3.9
題名:三体
鑑賞日時:2024年4月3日
鑑賞方法:Netflix
評価:3.9(MAX5.0)

『どんなに美しい理論も実験と合わなければ誤りだ。』


□鑑賞期間:2024/3/21~4/3
2024年10本目

□“三体”と呼ばれる侵略者の襲来に翻弄される人々の姿を描いたSFドラマ

例えば、“面壁計画”や“梯子計画”など、奇想天外ながら腹落ちさせられてしまう理論武装が見事な設定やアイディアに震撼させられる。偉大な原作小説があるとのことで、これは読まなければならないと思いつつも、どうしても気になってしまいドラマ版から鑑賞。技術者の端くれである自分としてはどうしても肩入れして見てしまう節があるし、そういったエクスキューズ抜きに、重厚で緻密なハードSFを知ることができたのは良かった。

さて、ここまで言っておいてなんだが、今作はというと“惜しい”“勿体ない”と感じてしまうシーンも多い作品だった。

世界的に著名な科学者の連続的不審死、最先端の実験データの破綻、夜空の瞬き、眼前に現れた終末へのカウントダウンなど興味を引くエッセンスが凝縮されていた序盤は魅力的なのだけれど、“三体”の存在が明かされ、一連の事件の全貌が見え始めると面白さは失速傾向になる。

要するに、興味が集中する序盤のうちに魅力的でユニークな登場人物を構築できなかった点と、映像作品としての物語の起伏にあたるシーンが限定的であるという点が、失速の主な原因なのではないかと思う。謎で興味を引き、巧く登場人物たちや物語の展開による魅力に繋げられていない様に感じてしまった。

原作既読者の解説を読むとドラマ版に向けてアレンジが大胆になされていて、侵略者に対して緻密な科学的プロセスによって解決策を模索していくシークエンスはかなりオミットされているとのこと。その科学的アプローチを思案する中で登場人物たちの魅力が光っていくのかも、と勝手に思ったり。

とはいえ、原作をなぞればそれだけ話は鈍重になるだろうし、下手をすれば小難しくウケの悪い作品にもなりかねない。重厚で偉大な原作をドラマに落とし込む作業は相当に骨の折れる作業だったはず。たとえそれが、GOT製作陣だったとしても。

□まとめ
一番の盛り上がりである5話や最終話に当たる8話はかなり面白かったので、コンスタントにこの熱量を維持できれば傑作ドラマの仲間入りを果たすのではないかと思う。S2に期待。それまでに原作は読みたい。


以上