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王様戦隊キングオージャーのdxdxdのレビュー・感想・評価

王様戦隊キングオージャー(2023年製作のドラマ)
4.5
最高に楽しませてもらった1年だった。
思わず口ずさみたくなるような口上と想像の斜め上を行く、心を熱くさせるようなストーリー。
特に最初から戦隊として団結せず、『ゲーム・オブ・スローンズ』を彷彿とさせる国々の謀略策略入り乱れる絶妙なパワーゲームをしているのが新鮮だった。最初何ならギラを独占するしないの争いをしていたからね。それがデスナラクをはじめ、強大な敵を前にして、”王様戦隊”になるカタルシスがとんでもなかった。側近や国民の力で誕生したゴッドキングオージャーやデスナラクとの決着の付け方も素晴らしかった。『グレンラガン』を彷彿とする第2期も心が燃え滾ったし、散々ヘイトを集めてきたラクレスがついにその真の目的を明かした時もどうにかなりそうだった。そして、エンドゲームかと言いたくなるラスト3話も言うまでもない。そういう縦軸のストーリーはフレッシュさとエモーショナルさを両立させていた。ただ、間のサブエピソードが時々、劇中の倫理観が悪い意味でバグっていたり、トンチキが滑っていたり、キャラクター像が若干合わなくなったり、気になるところが多々あった。シリーズ構成は高野さんに任せて、縦軸が進まないところは他の脚本家が書いても面白かったかもしれない。そうは思うけど、物語のドライブ感が楽しくて仕方なかった!

そして、物語の根幹は武力や権力の恐ろしさを描いているのが凄まじいと思った。戦隊の力の原罪みたいなものは意外と真正面に描かれてないが、本作はそれに真摯に向き合っているように見えた。特に前半はキングオージャーの強大な力をいかに共同管理するかという話でもあったし、終盤でも力や権力に飲まれる怖さを描いていた。また、国民の疑念や猜疑心を煽り、人々を分断するという回もあり、もはや戦隊の皮を被ったポリティカルサスペンスと思った!そして、国民のために剣を振るうギラたちの対極な存在としてダグデドが位置づけられていた。力を自分の快楽のために無差別に振るい、他者を蹂躙する。そういう権力や武力のアンサーとして「反逆」というキーワードがあったと思う。力に対して、無条件に受け入れず、疑問を持ち、自分で考える。その「反逆」が単純に敵だけに向けられものではなく、ギラたち王様たちに向けられたのがエポックだった。ヒーローが圧倒的に正しい選択をするわけではないし、英雄視する自体に危険性がある。最終的には自分たちで考え、行動しないといけない。だからこそ、ラスト、国民たちが王様戦隊たちを助けるための「反逆」が心に響いて仕方なかった。

あと、他にもチャレンジングな点は挙げたらキリがない。LEDウォールを利用したバーチャルプロダクションでスーパー戦隊の中で全く既視感のない画の数々だった。本当に毎回やるのかと懐疑的だったけど、シリーズ通して行っており度肝を抜かれた。「どうせ、ラストは岩船でしょ」という固定概念を破壊してくれる、ラストのエンドゲーム張りの集団戦は圧巻だった。

ゼンカイ、ドンブラと経て、「あ、もう戦隊はトンチキコメディ以外無理じゃん」と思ったけど、そこに新しい風を吹かせてくれた。時折思い出して絶対また泣いてしまう。
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