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エルピス—希望、あるいは災い—のdxdxdのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

今期どころかオールタイムベスト級のドラマだった。
ある真実に対して不撓不屈の精神で立ち向かう岸本、浅川たちの狂気に近い執念が心に焼き付いて仕方ない。
何よりも渡辺あやという脚本家、長澤まさみ、岡部たかし、そして眞栄田 郷敦という俳優にこのドラマで会えて本当に良かった。最初、脅迫から始まった取材で、真実に近づき、それに伴う人の想いを受け取っていく。被害者遺族や村井、大門亨らからもらったバトンを岸本が受け取り、どんづまったところで再び浅川が受け取り、巨大な権力に立ち向かう。

「毒のまわった頭で走り回った死にぞこないですよ。だから早く息の根止めてあげてくださよ
「おじさんたちのメンツとプライドは地雷なの」
「僕は負けたんです。決定的に負けて、それからずっと負け続けてる。一番嫌いで、許せないはずのやつらにこびへつらいながら。勝ち組でいさせてもらうために」とか劇薬のような言葉のオンパレード。

「エルピス」でやはり白眉なのはその権力の描き方。
半沢直樹のように絶対的な悪がいて、そいつが悪行を指示する、なんてものは一切ない。
ただ、気が付いたら圧力、印象操作、そしてもみ消すための殺人まで行われる。特に第8話のラスト、結果として浅川と岸本を分断したあの展開には震え上がった。

第一話で村井さんが「世間は自然界と同じで、ジャングルに虎、海にはサメがいるように世間にも怖い生物がいる。彼らは目に見えない縄張りを張っていたりする。どこに何がいるかも分からないガキが、棒を振り回したら大変な目に遭う」と言っていたけど、まさに予言通りでアナコンダのような権力に飲み込まれる。ただのひたすら、その姿を現さないのが、より一層権力の禍々しさを際立てる。

でも、そんな権力に対して、「間違っているものは間違っている」と立ち向かい続ける人間たちを描くのが渡辺あやだと思う。最終回で斎藤と対峙した浅川が「この国の司法は正しく機能していない。病人はその病名を知らないと正しい治療が出来ない」と言い放つ。同じく渡辺あや脚本の「今ここにある危機とぼくの好感度について」でも「例えば病気が重くて死にかけてるんなら、まずそれを認めるしかないじゃん。どんなに嫌でも病名を知らなきゃ、治療だって始まらないじゃん」という台詞がある。たとえ、大きな痛みや影響が伴おうが、構造的な歪みを認識しならなければならないという事は通底して描いてきている。

だからこそ、岸本と浅川が勝ち取った勝利はチェリーさんや松本さん、その他被害者関係者にとっては希望であり、齋藤をはじめ政府関係者にとっては厄災。また、レイプ事件のもみ消し、大門亨の件に関しては闇に葬られ、絶望でもあるかもしれない。完全に正しいことなんてなくて、善玉でも悪玉でもあるかもしれない。それでも信じられる人と信じられることをするのが希望のようなものだと自分は思った。
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