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デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士のHKのレビュー・感想・評価

4.0
原作を読んだのは文庫が発売された2015年ですから、もう8年も前。
本の帯に先ごろ亡くなった山田太一氏の推薦文が書いてあるのが珍しくて書店で手にとったのを憶えています。
この本を読んでコーダのこと、日本の手話には日本手話と日本語対応手話があることなどを初めて知り、とても興味深く、そして謎解きも面白く一気に読みました。
ちなみに映画の『コーダ あいのうた』が公開される6年ほど前の話です。

そのときに一度読んだきりですから、忘れていることも多々ありますが、まず前編を観て、とても上手く簡潔に脚色されており、印象的なエピソードも原作のイメージを損なうことなく映像化されているなと思いました。
キャスティングも大きく違和感のある人はほとんどいません。
強いて言えば何森(いずもり)刑事役の遠藤憲一が最近何にでも出すぎでしょうか。
前編の終わり方もよく、後半のストーリーをあまり憶えていなかったこともあり、後編がどうなるのかとても楽しみでした。

そして待ちに待った後編。さすがにあの長さの話をまとめるのに苦労したようです。
原作通りかどうか記憶が定かではありませんが、結婚式のくだりはさすがにちょっと現実離れしているかと。
しかし、その前のシーンから引きずっている涙はもう止まりません。
ツッコミどころはあるものの、オープニングから印象的なラスト・カットまで、原作物としては満足のいく映像化作品だったと思います。

そしてなによりも、この原作の存在および聾者の方々の生活を映像で多くの人に知らしめた功績は大きいと思います。
聾者をひとくくりにするのではなく、さまざまな個性の聾者が何人も登場したのも印象的で、お年寄りから子供まで実際の聾者の方々が演じたこともプラスに作用したと思います。

そして本作のために手話を習ったという主演の草彅剛と橋本愛お二人の手話、手話がわからない私が言うのも変ですが、とてもキレイで説得力を感じました。
本作はスタッフ・キャストの真摯な取り組みが感じられる気持ちの良いドラマであり、同時に、文字とは違う映像ならではの表現、映像化することの意義というものをあらためて感じることができた作品でした。

filmarksさん、ジャケ写掲載ありがとうございました。
HK

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