タケオ

コブラ会 シーズン3のタケオのレビュー・感想・評価

コブラ会 シーズン3(2021年製作のドラマ)
4.5
 『コブラ会』シーズン2の最終話で勃発した学校内での乱闘は、登場人物たちの仲を容赦なく引き裂いた。あまりの事態に打ちのめされたジョニー(ウィリアム・ザブカ)はコブラ会を去り、悪評によってダニエル(ラルフ・マッチオ)の会社の経営は悪化。ミゲル(ショロ・マリデュエニャ)は昏睡状態に陥り、ロビー(タナー・ブキャナン)は逃亡、トーリー(ペイトン・リスト)は保護観察の対象となり、サマンサ(メアリー・モーサ)はトラウマに苛まれるようになる。生徒たちの分断は一層深刻なものとなっていき、広がる不安につけ込むことでジョン・クリース(マーティン・コーヴ)は、コブラ会の生徒たちを情け知らずの「兵士」へと鍛え上げようとする。もはや全ての事態が収拾不可能のように思われた矢先、ジョニーとダニエルはある'懐かしい人物たち'と再会することとなる——。
 『ベスト・キッド』(84年)に登場したアリ(エリザベス・シュー)や、『ベスト・キッド2』(86年)のクミコ(タムリン・トミタ)にチョウゼン(ユウジ・オクモト)など、シリーズのファンには堪らないサプライズ・ゲストが続々と登場するシーズン3。シーズン2のラストでも仄めかされてはいたが、アリが登場した瞬間には思わず声が漏れてしまった。しかし、旧シリーズのキャラクターたちがファンへの目配せとしてノスタルジー的に消費されることなく、しっかりとドラマそのもののテーマに沿った形で登場するあたりは流石『コブラ会』。どのキャラクターにも「意味」がある。
 ジョニーとダニエルは、アリやチョウゼンたちと再会したことで自らの「過去」と向き合うこととなる。過酷な「現在」に打ちのめされた2人にとって、何もかもが輝いていた「あの頃」はあまりにも甘美な思い出だ。しかし、アリやチョウゼンたちとの交流を通じて、2人は「あの頃」への逃避と決別する。どれだけ美化しようが「過去」はあくまで「過去」であり、若者たちの「未来」を守るために「現在」に立ち向かうことこそが'センセイ'の役目であると自覚していく。そんな2人の姿を見て、僕は改めて『コブラ会』というドラマの素晴らしさを実感した。「過去」に縛られすぎずしっかりと「現在」の作品として機能しているという意味において『コブラ会』は、やはり近年流行している「80年代リバイバル」の中でも明らかに突出している。
 『コブラ会』は「現在」を美化することはなく、しかし、決して悲観することもない。『コブラ会』は「強者の論理」や「弱者断絶論」が罷り通る「現在」の冷酷な姿に自覚的でありながらも、それでもなお「未来」への希望的な観測を見失わない。もちろん、まだまだ問題は山積しているが、遂に「過去」の因縁を乗り越えたジョニーとダニエルが辿り着く『コブラ会』シーズン3の結末には、驚くべきほどの興奮と感動が宿っている。人生に早いも遅いもない、人間はいつからでもやり直せる。「過去」へと逃避せず「未来」のために「現在」を生き続ける限り、きっと僕たちは大丈夫。そんな『コブラ会』の主張は、全く先行きの見えない「今」という時代だからこそ、どこまでも力強く鑑賞者の心にも響くはずだ。
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