ヴァランダーは裏切らない。
どんどん人間性を失ってゆく父。
もはや心を通い合せる術を失った親子。
シリア系の恋人を作った娘。
いまだに互いにかける言葉を見出せない親子。
三世代の真ん中で、居場所を失う、もはや若くはない男。
決して完璧ではない男の、そして人間の、悲哀、苦悩、そして葛藤を、黙して背中と瞳で語る。
地味な聞き込みと捜査を積み重ねる上で、浮かび上がる事件の真相。
事件を解決しても、すべてが解決する訳ではない。
むしろ割り切れないものが際立ち、やるせなく、ほろ苦い後味を残す。
それでも、顔を上げ、歩き出さなくてはならない。
「でも俺たちは生きていくしかない」
個人的にシーズンベストは、e3『五番目の女』。
オープニングから、ヒッチコック監督の名作『鳥』を彷彿とさせる不穏な雰囲気。
北欧サスペンス独特の連続猟奇殺人「拷問」。
その裏に隠された犯人の想い。
ラストのショックの後、一転する、やりきれない想い。
そして、シーズンを締めくくる、余韻を残すエンディング。
もはや映画レベルの完成度。