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仮面ライダークウガのHALのレビュー・感想・評価

仮面ライダークウガ(2000年製作のドラマ)
5.0
仮面ライダークウガ20周年、幼少期の朧げな記憶のまま半年かけて観た。

わかってはいたことだが、怪人たちが社会に紛れたまま「ゲゲル」という殺人ゲームを行なっていく物語は、あまりに恐すぎる。それにクウガと警察機構が対応していく訳だが、ゲゲルの内容によっては殺す人数や殺し方にも制約がかかり、それを探っていくことになるのも犯罪推理ドラマとして面白い。その過程で古代人種グロンギとリント(現人類)との戦いが浮かび上がり、作中では一切説明されないグロンギ語が当時の熱心なファンによって翻訳されたりしていたのも、緻密な設定で世界観を構築していくクウガ世界の(異常なまでの)作り込みの結果だろう。

特にE34「戦慄」が衝撃的だった。ゲゲルの対象がある高校の男子生徒全員だなんて、何が何でも怖すぎる。これを中高生の頃観てたらトラウマだろう。事件の説明から糸口を掴んで急行するまでの一話が濃密すぎる。五代と生き残った生徒とのやりとりが胸に刺さる。

「どうして殺されなきゃいけないんですか!」
「理由なんてないよ。だから、殺させない」

一見残酷な返答だが、作中のあまりに残酷な展開と、それでもなお希望の中心として動き続ける五代雄介のきっぱりとした対照がこの作品の最大の魅力だと思う。五代は時々重体となり昏睡状態にまでなる(なんならサイヤ人のような瀕死からの回復という強化手段が存在する)のだが、そうした時も常に誰かが戦っていて、警察を中心とした組織的な人間とグロンギの戦いという様相は回を重ねるごとに激化していく。見ている側も「みんなの笑顔のために」五代が死んでしまうのではないかという危惧を抱えていくのだが、仮面ライダーのもつダークさを継承しつつ、新しい平成ライダーのマスターピースとなったことは間違いない。

完走後に後年のオダギリジョーがクウガについて語る「怪獣ラジオ」を聞いた。ここで語られるいかに五代雄介を演じたのかという話には思わず涙腺が緩んでしまう。「アフレコっぽくしたくなくていつも本気で声を入れていたから、立ちくらみ用の椅子が常に用意されていた」というエピソードには、思わず五代雄介のあのポーズを思い浮かべてしまう。「でも俺、クウガだから」。
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