ShinMakita

THE WIRE/ザ・ワイヤー シーズン5のShinMakitaのネタバレレビュー・内容・結末

4.6

このレビューはネタバレを含みます


選挙に勝利したカルケティは、新たなボルティモア市長となった。警察官の待遇改善を公約とし、就任直後から本署の改革を断行する。副警察長ロールズを事実上のトップとし、犯罪捜査部の長には西部署のダニエルズを抜擢、空中分解していた特捜課を復活させるのだった。カルケティ支持の牧師を殴ってしまったことで市警をクビになったハークを除き、特捜課の全員…レスター・フリーマン、キーマ、シドナー、マクノルティ、ドーザーマンは、再び西部地区の大物マルロ・スタンフィールドの監視を開始する。折しも、西部地区の空き家から22体の死体が見つかる大事件が発生していた。状況証拠から見て、ホシはマルロファミリーのクリス&スヌープに間違いない。マルロの敵の死体が消えていたのは、二人が発見されにくい空き家に死体を隠していたためであった。特捜課は、この大量殺人でマルロを挙げるため、盗聴盗撮による監視作業に入る…



(1年後)
しかし、一年を経過しても特捜課は全く成果を上げられずにいた。警察全体で予算が大幅に削減され、まともな監視ができなくなっていたのだ。警察の給与引き上げ・超過勤務手当支払い・予算アップを確約していたカルケティ市長だが、その言葉は大ホラとなってしまっていた。実は就任して初めて、市内の小中学校全体で数千万ドルの累積赤字があることが判明したのである。そこで予算を教育方面に振り分けなくてはならなくなったのだ。ボルティモア市警内部も縮小化の波にのまれ、結局特捜課は解散となってしまった。


(市警察)
特捜課解散後、マクノルティとキーマは殺人課配属となり、レスターとシドナーは検事局の手伝いに駆り出される。検察は今、前市長のスポンサーだったクレイ・デイビス議員の汚職を追及しているのだ。
マルロ逮捕を諦めきれないマクノルティは、警察予算を増やすためとんでもないことを思いつく。それは「事件の捏造」。たまたま出くわしたホームレスの病死体を他殺体に偽装し、過去未解決になっているホームレス殺人事件の現場にあった目印をくっつけて、連続殺人事件をデッチあげたのだ。このネタを地元新聞ボルチモアサンにリークし、世間の注目を集めれば市長も動いて捜査費が下りるだろうという読みだった。

(ボルチモアサン)
老舗新聞のサン紙も不景気に喘いでいた。リストラが続くなか、ベテラン編集者のガス・ヘインズは生き残り、少数精鋭の若手記者チームの監督を任される。チームに入れられたスコット・テンプルトンは、同僚アルマが書いたホームレス連続殺人の記事に興味を惹かれた…


(ストリート)
特捜課の監視が解けたことを感じたマルロ・スタンフィールドは、ヤクの売買に本腰を入れ、販売網拡大に乗り出す。大量のヤクを一気に卸してくれるのは、東部地区のプロップ・ジョーが契約している「ギリシャ人」ヴォンダスだけだ。そこでマルロは大金をバラまき、なんとかヴォンダスとのコネを築こうとする。さらに、自分に大損害を与えた宿敵オマールの行方も追っていた。姿を消しているオマールをおびき出すため、その親族友人を無慈悲に殺害していくマルロ。その凶悪ぶりに、若い手下となったマイケルやドゥーディは恐怖を覚えていく。

(マクノルティ)
マクノルティがリークしたホームレス連続殺人の記事はあまり人目をひかなかった。そこでマクノルティから相談を受けたレスターは、連続殺人をセックス絡みにしようと提案し、四人目以降の死体に歯形をつけてみる。おかげでサン紙のスコットが一面記事を書き上げ、ついにカルケティ市長が注目、捜査費が臨時に下りることになった。
オマールに狙われながらもマルロはジョーを始末し、ヴォンダスとの独占契約に成功する。そして稼いだカネを、ギャング専門の弁護士レヴィに預けロンダリングを開始する。一年前に市警を追放されたハークは、今はレヴィに雇われている調査員。迷惑をかけた元相棒カーヴァーに借りを返すため、レヴィが預かったマルロの携帯電話番号を盗み出すのだった。
こうしてマクノルティ&レスターは、カネと携帯電話番号を手に入れた。あとは盗聴許可を得るだけだが、盗聴とホームレス連続殺人をどう関連づけるか、頭を悩ませる。



「ザ・ワイヤー」最終シーズンです。今回は市警・麻薬組織・新聞社を舞台に、この三者が暴走して機能不全に陥っていくさまを冷ややかに描きます。全体的に救いゼロのこのドラマ、通して見ると「傑作」としか言いようがありません。刑事モノという形を借りて一つの都市が抱える問題点…犯罪・教育・貧困を浮き彫りにし、それらが密接に関わっている様子と解決策の提案をしているのが凄いのです。その上で、エンタメとしての面白さが欠けていないのも素晴らしい点。シーズン5で言えば、マクノルティのデッチ上げ騒動がどんどん広がっていくサマと彼の転落ぶりから目が離せなくなるのが特徴です。また、過去シーズンでケリがついていない点が再浮上してくるのも楽しい部分。シーズン2で逃してしまったギリシャ人が事件に絡んでくるところはゾクゾクします。悪役が光るのも特徴で、バークスデイルファミリーのストリンガー・ベルや孤高のギャング・オマールなどは、出てくるだけでアガリます。とにかく、刑事ドラマ史上に残る作品として、一度は見ておきたい作品。Amazonプライムで無料なうちに、ぜひ!
ShinMakita

ShinMakita