延々と歩く

マインドハンター シーズン1の延々と歩くのレビュー・感想・評価

マインドハンター シーズン1(2017年製作のドラマ)
4.3
 異常犯罪が増加した70年代、犯人との面談やプロファイリングを用いて捜査手法をだんだん確立していくお話。FBIで捜査の中心人物だったジョン・ダグラスの手記をもとに、「セブン」「ファイトクラブ」のデヴィッド・フィンチャーが監督・プロデュースを引き受け映像化した。

 連続ドラマって苦手で大抵リタイアしちゃうけど、これは面白かった。全10話のなかで中だるみするのもせいぜい1,2話くらい。

 フィンチャーが連続ドラマについて「一話ごとに60分とか時間が決まっているのはおかしい。内容に合わせて10分で終わったり、70分を超えたりしても良いはずだ」と発言していて、水増し部分がうっとうしくて避けてた人間なのでとても感心した。中だるみしまくってるのにラストだけ次回への伏線はったりするから困るんだよな~せめて適切な長さに引き締めてくれと。

 とはいえこのファーストシーズンも基本的にランタイムは5,60分はあり、30分で終わるのは一話しかないからやっぱフィンチャーも自分の作品じゃアレも入れたいコレも入れたいで作ってんのかと思いきや、ほとんど気にせずスイスイ見られる。

 ストーリー的にはほぼ意味のない車や飛行機での移動シーンも演出の呼吸が上手いのか、苦痛にならず箸休めなものと感じられる。かえって映画なんかじゃ考えちゃう時があるけどなー、ドラマだと一話ごとにこちらの意識がリセットされるのか。

 毎回とばしちゃうのは冒頭のオープニングクレジットくらいで、エンディングは音楽が良いので観てしまう。まあエンディングが耳に楽しいのは圧倒的音楽文化の豊かさが背景にあるアメリカ製ドラマの大きな利点ですな。

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 哲学者ニーチェの有名な格言に「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいている」というのがあり、一時期はこれ言うともれなく「中二病」認定される感があった。

 とはいえそういう「深淵にのぞきかえされる」瞬間、怪物と対峙するならこちらも怪物になるしかない現実というのはあって、我らがFBIチームもそうなっていく。精神を蝕まれたりそうでなくとも私生活が犠牲になったり、ガンガン捜査を進めていくうえでなんかFBI内部にもサイコだかソシオパスっぽい何かが(特に主人公に)あるように感じられたり…。異常犯罪のヤバさ、それに向き合うジレンマが良く描かれていた。
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