mimitakoyaki

シカゴタイプライターのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

シカゴタイプライター(2017年製作のドラマ)
4.0
Netflixでの配信が今月末で終了するということで、見れる間に見ておこうと、なんの予備知識もないまま手を出してみたら、現代パートのラブコメと、1930年の日本による植民地時代を生きた朝鮮独立を志すレジスタンスの若者達の青春を、80年という時代を経て繋いだ(トッケビ風の)異色のファンタジードラマでした。

日本が朝鮮を植民地支配していた時代の事は、歴史の授業ではあまり習わなかった気がしますが、「空と風と星の詩人 〜尹東柱の生涯」や「マルモイ」「密偵」「金子文子と朴烈」などの素晴らしい映画作品で知りました。

その時代、日本によって国土だけでなく言葉も文化も名前も自由も奪われた、朝鮮の人々にとってとても厳しく辛い時代でした。
このドラマでは、ラブコメなのにそんな暗くて重たい時代を扱ってる事にまず驚きます。

現代パートでは、スランプに陥って書けなくなった売れっ子小説家と、そのファン(オタク)と謎のゴーストライターがドタバタと出会い、スッタモンダしながら友情や恋愛に発展し、ひとつの作品を作り上げるストーリーを軽いタッチで描いていますが、80年前、植民地時代に生きた彼らの前世が誰に殺されたのか、どう生きてどう死んでいったのかという謎に迫っていく30年代パートは重くミステリアスです。

過去と現在を行ったり来たりしながら、少しずつ人物たちの関係性が見えてきたり、過去を知る事で主人公の小説家も生き方が変化していきますが、途中までは展開がゆっくりな感じもありつつも、後半どんどん面白くなって盛り上がっていきました。

30年代の朝鮮で、日本に支配されたことによって、当たり前に恋愛や仕事に打ち込んだり、安心して生活する事が奪われ、日本から独立するために命を賭けざるを得なかった人達の闘いの人生は、見ていてやはり辛く、また申し訳ないような気持ちにもなります。

ドラマの中に
「膿を出し切らないと乗り越えられません。精算なき過去は腐敗し、断罪なき過ちは繰り返します。奪った者が奪われた者に罪を着せる不条理を、僕は経験しました。骨身に染みるほど。」
というセリフがありました。
それは、ある悪役の人物に向けられた言葉なのですが、これって、侵略戦争をした事への反省など、過去の過ちにきっちりと向き合ってこなかった日本にも当てはまる言葉だと思いました。

30年代のシーンで、街の中にたくさんの日本語で書かれた看板やポスターが見られ、日本語で話すシーンもありましたが、その意味を日本人としてはしっかりと考えたいと思います。

キャストも、ユアインがやっぱり光ってるんですよね。
現代パートの髪型がパクセロイ的なアレでイマイチですが、30年代の時の前髪が長くて丸メガネの時たまらん♡
色気がただごとじゃない。
実在して欲しい!
前世と現世でここまで印象変えられるってすごいです。

コギョンピョも今まで感じたことのない魅力があり、お茶目であり、優しくて誠実であり、切なくもあり、何度も泣かされました。

大好きなチョウジン氏はいつも小狡い悪役のイメージですが、今回初めてコミカルな役で楽しかったですし、服がオシャレなのも見所でした。
どんな作品でもきっちり印象を残していきますよね。

あと、ハングルのタイプライターがめちゃくちゃ素敵で、ハングルって母音や子音が上下左右に配置され組み合わさる文字なので、アルファベットや仮名文字のようにはいかず、一体どういう仕組みになってるのか、それがすごく気になりました。

3人の男女の過去から今につながる、信頼と友情と愛を丁寧に紡いだ見応えのある作品でした。

23
mimitakoyaki

mimitakoyaki