ねまる

Giri / Hajiのねまるのレビュー・感想・評価

Giri / Haji(2020年製作のドラマ)
3.8
Rotten Tometoes Fresh100%も伊達じゃない。
日本とイギリスを舞台にした、刑事ドラマであり、それよりもなお家族の話である。

日本の刑事である(兄)森健三は、(弟)勇人が関わっているロンドンでの殺人事件を追って、イギリスへ渡る。全てはこの(弟)勇人に起因した一連の出来事なのだが、(兄)はもちろん、(父)(母)(妻)(娘)そして、イギリスで出会うセーラ、ロドニーまで、(弟)の因果に巻き込まれていくのである。
その先に待っているものは。

(兄)健三は、典型的なお兄ちゃん体質なので、全てをかけても、(弟)を守ることに並走するし、家庭では(父)としての役割を演じることを強いられている。
家族における役割意識が、この物語の根幹にある。

(娘)多紀は(父)がいなくなった家族を抜け出し、(父)の(娘)に帰属しようとするが、ロンドンでの生活の中で、多紀個人としての自我に目覚め、また傷つくこともある。

ロドニーは、家族から離れて、自分らしく都会で生きてきたが、薬物中毒で、有色人種のゲイとしての、大切だった人との別れを経て、母のもとへ(息子)として帰る。

セーラは勇人の(兄)であり、多紀の(父)であり、(夫)であり、(息子)である役割からの解放を願うキャラクターでもある。

(弟)勇人は、(弟)ゆえ(息子)ゆえ、自由な人物である。悪く言えば、(弟)であるから、なんとかしてくれると思っているし、みんながなんとかしてあげたいと思うような人間でもある。

それと同時に、ロンドンでの彼らの物語と並行して、
日本では(妻)であり、(母)であった人たちの、(息子)(義弟)のための行動とはいえ、普段の役割から外れ、自らの意思に伴う行動を起こしていく。

家族のつながりと、家族の役割からの解放。
私が健三の立場でも勇人を助けたいと思うし、自分が手を離すことで、どこかに行ってしまう方が嫌。そう思わせる窪塚洋介の勇人の造形はさすがだと思ったし、この物語の家族だからこそのしがらみを納得させる全てのゆえがそこにある。

「結婚が長続きする秘訣知ってはります?
離婚しいひんこと、どす。なんちゃって。」
ウィル・シャープの喋る日本語、聞いてみたいなぁと思ったら、なんと京都弁な山口ロドニーくん。

ロドニーのキャラクター作りは、日英両キャストでも群を抜いていて、直接は家族のつながりあいのないロドニーのユーモアに癒されてる私がいた。
ロドニーに会いたいと思う私がいた。

おばあちゃんと義姉さんがふたりでヤクザに囚われてる子供とその母親を誘拐するとか、シリアスなのにちょっとぶっとんだ展開が絶妙。
今までの全てを集約したシーンをダンスで描くという挑戦的な演出も、真面目な刑事ドラマとしてだけで終わらせない演劇のような新しさがあった。

シーズン2はcancelされたからこの先を私たちは知らないけど、そこにはほかの正しさなんてなく、幸せに生きていてほしいと願っている。
ねまる

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