あられ

ドイツ1983年のあられのネタバレレビュー・内容・結末

ドイツ1983年(2015年製作のドラマ)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

1983年。冷戦時代の渦中真只中の東西ドイツ。このドラマは、東ドイツから西ドイツにスパイとして送り込まれた青年の波乱万丈の物語で、当時の映像を交えつつ、核戦争勃発の危機と言われた ”エイブル・アーチャー83” を巡る攻防戦を中心とする、史実を元にしたフィクションです。スパイど素人、迂闊で行き当たりばったりの主人公が、結構危うくてハラハラドキドキします😆

ウォークマンやエイズの流行などの当時の社会情勢、ヒット曲、今だからこその笑えるシーンなどを堪能することができて、めちゃくちゃ楽しめました。しかしながら、日本の1983年はなんて平和だったのでしょう…😆

東ベルリンの場面では、冷戦時代の東西ドイツをモチーフにした、西から東へのスパイ潜入物アニメ ”SPY×FAMILY” でお馴染みの、レトロでボロかわいい東ドイツ車 ”トラバント” の実物が、実際に走っていて大興奮しました😆

このドラマのオープニング曲は、1983年にヒットした ”Major Tom (Coming Home)” です。シンセ・ポップ系で人気のシンガー・ソングライターで、西ドイツ出身のピーター・シリングの曲です(彼はこの曲だけの一発屋と思ってましたw) “フォー、スリー、トゥー、ワン” というカウントダウンが入る曲なのですが、キノコ雲の映像が流れたりして、核戦争への危機に対するカウントダウンが示唆されているようでした。

主人公の母親の誕生パーティで見られていたTV番組の中で、1983年に世界中で大ヒットした、西ドイツの歌手・ネーナの ”99 Luftballons” のドイツ語バージョンが流れており、皆が一緒に歌っていたのには驚きました。東ベルリンの中で壁に囲まれているだけの西ベルリンのTV番組なので、東でも見れるのでしょうか。

他にも各々のシーンにマッチした、1983年を中心にした80’s初期 (10ccだけは1975年) のヒット曲、ユーリズミックス、デヴィッド・ボウイ(3曲も)、デュラン・デュラン、スティーヴィー・ワンダー、ポリス、フィル・コリンズ、ビリー・アイドルなどの名曲が効果的に使われており、80’sファンにはより楽しむことができます。ラストはクィーン & デヴィッド・ボウイの ”Under Pressure” なのですが、めちゃくちゃセンスのある選曲だと思いました😊

1983年に世界中でベストセラー & ジョン・ハート主演で映画化もされた小説 ”1984年” が、東ドイツ内で禁書になっていました。”1984年” は、ジョージ・オーウェルがソ連から発想を得て、1948年に着手し(実は4と8を入れ替えただけw) 1949年に発表した、政治権威主義国家が、宣伝・検閲・暴力を通じて体制維持の確立を目指すと言う、未来の全体主義的ディストピア国家を描いています。東ドイツで禁書になって当然の本です。

北朝鮮の国家設立に際して、この小説を真似したんじゃないかとも言われてました(でも北朝鮮の建国は1948年で、1年前ですねw) 未だ根強い人気で、トランプ時代のアメリカで再び、禁書じゃなくなったロシアでも昨年、ベストセラーになったようです😆

ドラマ内で、ドイツ映画の “世界の終わり” がちらっと映りますが、かなり衝撃的な映画のようで気になりました。実はアマプラで見ることが出来るのですが、残念なことに、ドイツ語字幕なしとか、かなりハードルが高いのが難点です😭




国家人民軍(東ドイツ軍)の24歳の兵士、マーティン・ラオホは、ドイツ民主共和国(東ドイツ)の秘密諜報機関、偵察総局 (HVA)の局員で伯母のレノーラ・ラオホに、病気の母親の治療と引き換えに、西ドイツへのスパイとして勧誘されます。マーティンの母親は、特権階級が優先の肝臓移植を必要としており、もし引き受ければ、その待機リストに優遇して載せてもらえるのです。もうスパイに選ばれた時点で拒否権なんて既にないのだけれど…😰

スパイ活動未経験のマーティン(暗号名 : コリブリ)は、文書を撮影するカメラの使い方、鍵の開け方、手渡しの練習、東の方言の克服、シュタムのサインの練習など、任務遂行に必要な技術を短期で仕込まれ、ドイツ連邦軍(西ドイツ軍)のヴォルフガング・エーデル将軍の下で、兵士・モーリッツ・シュタムになりすまし、主にNATO軍の情報を盗む任務につきます。本物のシュタムは暗殺されてましたね😱

1981年にアメリカのレーガン大統領、1982年にソビエト連邦のアンドロポフ書記長が就任したことで、デタントムードから一転、第二次冷戦時代が始まります。ソ連を ”悪の帝国” と罵り ”強いアメリカ” を掲げるレーガンは、対ソ強硬路線をとり、軍備増強を進めたため、HVAは NATO軍による核攻撃の兆候を探りたかったのです。お約束の ”レーガンは元役者だから” なんてバカにするセリフもありました😆

いきなり西ドイツに連れて来られたマーティンは、東ドイツにいる恋人・アネットに事情を説明できないままだったので、何とか話をしたがってますが、なんとエーデル将軍の家でのパーティ中に、彼の家の電話で彼女に連絡しちゃいますw しかも奥さんの妹に見られたりしますw 彼は有能な人間かもしれないけど、スパイには向いていませんね😆

マーティンがNATO分析官・マイヤーのホテルの部屋の金庫から、機密文書を盗むシーンでは、少し手こずりはしたものの、意外と簡単にホテルの金庫を開けてしまってびっくりしました😰

金庫の中にあったのは、樹皮製で中央に穴 & “フロッピーディスク“と書いてある代物で、初めて見る ”5インチフロッピー” にあたふたするマーティンや、同じくHVAの局員たちが笑えますw

そして、当時の東ドイツのコンピュータは ”ロボトロン” で、いくら技術者が奮闘してもNATOの機密を読み込むことができませんw そこで使っていたロボトロンは、なんと8インチのフロッピー仕様みたいですねw フロッピーがめっちゃでかいです😆

機密文書を読み込めるであろうアメリカのIBM製のコンピュータは、アメリカの禁輸措置で西ドイツからでも手に入らないため、ドレスデンのミンツ教授からIBMを借り受けることで、やっと文書の解読ができることになります。

技術者がつい嬉しくて “クール” とか “OK” とか禁止用語を言っちゃうシーンで和んだのも束の間、彼は ”暗号化されてます“ って、ため息をつきますw 当たり前の事なんだけど笑ってしまいましたw この頃アキバでロシア人たちがコンピュータのパーツを買い漁ってたそうで、そう言うことだったのかもと納得😆

暗号の解読に時間がかかりそうなため、イケメンマーティンの更に更なる任務指令は、“ロミオ・トラップ” = 東ドイツお得意の、男が女にハニートラップを仕掛けるやつです。西ドイツの首都ボンには売れ残りの寂しいキャリア・ウーマンが多かったらしく、成功率が良かったそうで、マーティンもNATOの主席分析官の秘書である、30歳独身のリンダに仕掛けてうまくいきますが…。

マーティンったら、いつの間にか彼女に惚れてしまってませんかw どうやら彼、垢抜けてる西の女性がいいみたいですね😆

そしてドラマのクライマックスは、1983年11月2日から10日間、西の各領土で行われるNATO軍の軍事演習 “エイブル・アーチャー” を巡る情報戦です。“エイブル・アーチャー” は、ソ連の核攻撃に備えてNATO軍の指揮統制を試すための演習なのですが、それに伴い暗号通信の導入やムートランゲン町にパーシングIIを配備します。

HVAのレノーラの上官、ヴァルター・シュベッペンシュテッテ(舌噛みそうな名前w) は、それをNATO軍による先制核攻撃ではないかと強く信じ込み、あくまで演習とする解読文書を都合良く改ざんしてソ連に提出します。新米スパイのマーティンの情報 (軍事演習であって核攻撃ではない)にも疑心暗鬼を抱き、聞く耳を持ちません…😰

ソ連は先制核攻撃こそ防衛力の優位性があると考え、東ドイツに核武装した戦闘機を配備し、RYAN作戦 = 核兵器の発射準備を始めます。恐ろしいです😱

一方アメリカは、ソ連の動きを察知しつつ、先制核攻撃はブラフにしか思ってません。意外と呑気ですw 1983年9月1日には、ソ連による ”大韓航空機撃墜事件” があったというのに…。

板挟みのマーティンは、スパイとしてあるまじき行為を犯しても核戦争を止めようとしますが…。

不器用で融通が効かなくて、金魚が友人のエーデル将軍が、部下に裏切られ、家族にも見捨てられる…。最後はちょっと可哀想でした😭
あられ

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