GreenT

ハンドメイズ・テイル/侍女の物語 シーズン1のGreenTのレビュー・感想・評価

5.0
回想シーンを多用して、事件が起こったところをスピーディに繋げていく手法で、全く退屈させません。現在と過去が行ったり来たりする中で、「なんでこういう状況になったの?」「ああ~、こういう流れだったんだ!」と、言葉でダラダラ説明するわけではないのに、サスペンスとネタバレが絶妙なタイミングで起こっていき、本当に面白いです。

設定は、アメリカで内戦が起こり、新しい政府は恐怖政治を敷く。女性は自己資産を持つことを禁止され、上流階級の子供を産むためにハンドメイドとして教育される、というものなんですけど、ものすごいリアルに描かれていて、起こりえる現実なので、すっごい怖かったです。

女性の銀行口座は凍結されて、全て夫の名義になる、ってくだりが一番怖かった。夫がいない、親族に男がいない私のお金はどうなるのだろう、と思った。それと、ジェーンが回想シーンで、色々ヤバイことになっていると気づいていたけど何もしなかった自分を後悔していて、今の私たちもトランプが大統領になったり、環境問題にしても、「おかしい」と思っていることがたくさんありながら「多分そんなひどいことにはならないだろう」とたかをくくっている愚かさを考えなおそうと思わされる。

また、主要人物の設定もすばらしいです。主人公のジューンは、金髪の白人女性なんだけど、旦那さんは黒人で、娘も旦那さんにそっくり。親友のモイラは黒人女性で、レズビアン。

物語の中でアメリカは、環境汚染のせいで不妊症が増え、妊娠しても流産や死産が増え、生まれても障害があったりなどの問題があり、ジューンも娘を妊娠した時に不安を感じる。

ジェーンが仕えるウォーターフォード家の妻・セレーナも、不妊症な上に男尊女卑の社会で政治にも参加できず、上流階級で教育が高いのに主婦生活を強要される。

ウォーターフォード家の主人、フレッドは、政治の世界で活躍しているハイランキングのコマンダーだが、どうも政治のアイデアはセレーナの方がありそうだ。ハンドメイドは子供を産むだけの道具であるのにも関わらず、性の奴隷として扱う。

このドラマが良くできているのは、主人公ジューンが必ずしも清廉潔白ではないところだ。彼女は夫と娘をとても大事にしているが、夫は不倫の末に略奪婚をしている。こういう人だから「ハンドメイド」として働かされて当然、なんて思う人もいると思う。ドラマの中の社会は、まさにそういう人たちが作った社会だ。

ハンドメイドの中には、この生活が嫌いでない人もいる。あるハンドメイドは、前の社会ではすごく貧しくて、安いお金で売春して、毎日ファストフードが食べられればいい方、みたいな生活をしてきた。だからハンドメイドとしてセックスして3食昼寝付きの生活ができることがありがたい。

この女性は、自由になろうとするジェーンに、「あなた前の社会では、スピンクラスに行ったり、ヨガクラスに行ったりしていたんでしょ?」という。つまり私くらいの生活レベルの女性、企業で働いて、自活できるくらいのお金を稼げる中流階級の女性は自由になりたがるが、本当に極貧の階級に生まれた女たちはハンドメイドの生活が快適であるという残酷な事実・・・・そう、このドラマは創作だけれども、現実を描いている。

ジューンがこの世界をどう生き抜くのか、この物語はどういう回答を出すのか、楽しみです!
GreenT

GreenT