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ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル シーズン1のGreenTのレビュー・感想・評価

3.5
アメリカ特権階級の白人が、ハワイにヴァケーションにやってきて、地元民にさんざん迷惑をかけておきながらなんの責任も取らされないで帰るという、不条理ながらあり得るお話です。

ハワイの高級リゾート「ホワイトロータス」に来るアメリカ白人の客たちは、みんなあるあるで、ニコルはサーチエンジン会社の女CFOで、彼女の家族はみんなリベラルで、ポリコレや自分たちの「特権」にも気が付いている、「Wokeな」人たち。ターニャは金持ちのおばさんで、整形している?んだけどもう年で顔とかすごい汚くて、高そうだけど趣味の悪い服を着ている。すごいエモいんだけど、悩みが「金持ちだからそんなことに悩める」系なのに、マイノリティの人がいい人達に慰めてもらって生活しているみたいな。

でもその中でもすごい突出していたのが、ニコルの娘オリヴィア!大学生なんだけど、これが私がステレオタイプ的に持ってる「白人の娘(ガキ)」って感じがすっごい良く表現されていた。自分が白人特権階級でありながら、それを全否定!「自分は自分の親とは違う」とか言って、親友は有色人種、やたら家族の会話に「いかに白人が有色人種を搾取しているか」を語って親を責める。

もう一人は新婚旅行で来てるレイチェルってキャラ。旦那のシェーンは不動産業で儲けている白人男性で、この人は典型的なグイグイ来る白人男性なんだけど、レイチェルは貧しい家の出で、シェーンの特権振り回すやり方を見ていてうんざりするし、女性に対しても「仕事なんかしなくていい」と見下した態度なので、「この結婚失敗だったかも」と思い始める。

で、このホワイトロータスってリゾートは、実は地元民から無理やり土地を取り上げて開発したもの。ハワイの元々の王様から土地を受け継いだ家系があったんだけど、政府が土地所有権の法律を変えちゃって、その人たちの所有権を認めないようなことをして、勝手に開発したらしい。その家系の子孫の男の子は、豚を飼ってタロイモ育ててみたいなすごい貧しい家庭で育ったんだけど、成人して「ホワイトロータス」でバスボーイ(お皿かたずける人)として働き始め、時々ハワイアンショーでハワイの伝統ダンスをする仕事に就くんだけど、そのせいで親戚にハブにされている。

なるほどね~って思った。私コスタリカのリゾートに行ったことあるけど、あんまり居心地良くなかったもんなあ。日本人って、ナプキンたたんじゃったり、ベッド直しちゃったりして「きれいにすると使ってないと思われてかたずけてもらえない」とかって言うじゃん?やっぱ日本人て相手に対して尊敬があるよね。白人って人を奴隷のように扱っておいて平気でいられるもんね。

このドラマ、昨今の「白人特権階級糾弾」みたいのを、白人特権階級真っ只中の人たちがどう受け止めているかが描かれていたので、それが面白かった。オリヴィアの親友で有色人種のポーラが「ハワイの地元の人が白人のために踊って見せるのは居心地悪い」と言うと、ニコルの夫マークは「じゃあどうしろっての?ずーーーーと罪悪感を持って生きればいいの?お金を全部上げればいいの?人間ってのはみんな他者を支配したいと思って争っているんだよ。ウェルカム・トゥ・ヒューマニティ!ウェルカム・トゥ・アメリカ!」って言うんだけど、まさに白人はそう思っているだろうし、尤もだなと思った。

あと、ニコルには16歳のクインって息子もいるんだけど、この子はニンテンドーとネットばっかりやってる。姉のオリヴィアにはバカにされていて、家庭で居場所がない。ニコルはオリヴィアに「クインと遊んであげて。現代は白人男性は一番力がない、マイノリティみたいなものよ。うちの会社でも、クインみたいな白人の男がいくら学歴があっても雇ってあげられないもの。私たちが彼らをインクルードしてあげないとね」とか言うと、ポーラは「あ~、それって、今まで白人男性しか雇用して来なかったことへのしっぺ返しみたいなもんじゃないの?」とかツッコむ。

で、最後も面白いんだけど、ネタバレになるのでこの後に書きますので、これからこのドラマを見ようと思っている方はスルーしてください。

面白かったのは、レイチェルがキャリアか結婚か悩んでいるとき、「支配的な白人男性に搾取される女性」みたいな感じで同情するんだけど、彼女の悩みを聞いてあげたハワイ地元民で黒人の女性が「ほんっと呆れるわ」って感じで出て行っちゃう。つまり、白人女性の悩みなんて、恵まれているのにウジウジしていて聞いてらんないってことらしい(笑)

で、最後空港で旦那のシェーンに会うんだけど「私はもう大丈夫。幸せよ」とか言って離婚しない!「ジャーナリズムで世界を変えたい」とか言うけど、結局はそれほどの情熱はなくて「特権」を捨てられないらしい。

でもシェーンは人を殺しているんですよ!!でも、特権階級だから「正当防衛」で済まされて起訴すらされない。

ニコルの$75000ドルのブレスレットを盗もうとしたカイって男の子は多分すごい刑になるんだろうなあ。

最近ティファニーのサイトを見ていてジュエリーの値段にぶったまげていたところだからこの話は刺さったね。私は3万ドルのネックレスを見て「これ買う人いるの?!」って思ってたんだけど、$75000だもんなあ。その裏で土地を取り上げられ、そのリゾートで白人に仕えることになる人がいるのをポーラが悔しく思うのは最もだと思う。

あ、そうそう、クインはあんな金持ちの家に生まれても全然幸せじゃないんだけど、ハワイでカヌーのチームと友達になってイキイキしてくる(これがもしかしたらクインはゲイなんじゃないかという示唆もある)。帰りたくないって言うんだけど、16歳だから親権は親にある。でも、帰りの飛行機に乗らないで、カヌーチームに参加しに行くんだけど、これもさあ、白人の未成年のクインが勝手なことをしても「手厚く保護」されるんだろうけど、快くクインを受け入れてくれたハワイのカヌーチームの方は逆に罰せられたりするのかもね。とか思いながら観てました。
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