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他人は地獄だの消費者のネタバレレビュー・内容・結末

他人は地獄だ(2019年製作のドラマ)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

大学時代の先輩の会社に誘われて釜山からソウルへ上京してきた小説家志望の男性、ユン・ジョンウ
彼は貧乏育ちな事もあり金が無く、家賃の極めて安かったエデン考試院に住む事に
だがそこにいたのは奇妙な振る舞いを見せる大家と住民達
ジョンウは彼らに苛立ちを覚えながらも我慢して暮らしていたが考試院ではおかしな出来事ばかりが相次ぐ
かつて発生した火災によって住人がだれもいないはずの4階から聞こえる大きな物音、消えていく住人、何者かによるジョンウの部屋への侵入…
徐々に恐怖を覚えていくジョンウだがやがて彼もまた心を蝕まれていく
一体、考試院では何が起きているのか?
というあらすじのホラーサスペンス

絶妙に気持ち悪い住人達の醸す雰囲気や振る舞い、少しずつ壊れていくイム・シワン演じるジョンウ、暗く汚い考試院という舞台など素晴らしい点は多々あったのだがジョンウが自らの経験を書き記した小説という設定の作品という事もありジョンウの心の声の占める割合が高くそこが少し独特な気持ち悪さを緩和させてしまっていた印象がある
ドロドロしたホラー作品なのだから台詞による説明は最小限に留め、演技と演出で察せる余地がある様な描写だった方がより怖くなったのではないかと

また韓国のドラマ作品なので仕方ないのだが放送規制が考慮されている故のゴア描写やナイフに掛かるモザイク等は物語が物語なだけに邪魔だった
そして相次ぐ気持ち悪い出来事に関しても似た様な事ばかりが起きていく点も考えるとドラマシリーズより映画でやるべき作品だった様に感じた

結果としてジョンウ自らも狂気に呑まれてしまうが公には無実とされて終わる胸糞展開は韓国らしい後味の悪さで良い
それだけにジョンウの壊れていく速度をもっと早めてくれていたらより嫌な空気感が強められたかも?

考試院の住人達だけでなくジョンウと彼の彼女、ジウンそれぞれの職場の人々も絶妙に嫌な人間や薄情な人間が多く、それによって社会自体が地獄だと示される点は面白かった
それとジョンウの壊れていく様が繋がって誰しも狂気に溺れてしまう可能性がある事が表現されていたのも良い
猫の連続惨殺事件の単独捜査からエデン考試院に行き着き唯一ジョンウの話を信じ真相を解明しようとする巡査、ジョンファの「お前は変だと言われ続けていたらまともな人でもおかしくなる」という結末を示唆する台詞も作品の本質を表していて印象的だった

住人達を引き合わせたのが大家、ボクスンが園長を務めていたセムト児童養護施設だった、という設定も閉塞感溢れる物語の出発点として鬱屈としていて好きだった

演技の面で言うとイム・シワンも勿論良かったのだが考試院の住人達を恐怖で操っていた歯科医、ソ・ムンジョ役のイ・ドンウクの好演も光っていた
構成や描写に物足りなさがありつつも惹き込まれたのは2人を始めとした役者陣の演技あってこその物だったと思う

あと作品の評価とは別になってしまうけどジョンウの彼女、ジウンを演じたキム・ジウンちゃんがハン・ソヒちゃんやイッジのリュジンちゃんに似ていて可愛かった
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