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ペーパー・ハウス・コリア:統一通貨を奪え: パート2の消費者のネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

・あらすじ
舞台は朝鮮半島
南北統一と共に発行される貨幣を狙い造幣局の強盗を行う一団と人質を救い事件の解決に努める警察達や軍隊、そして貨幣発行を使って利益を得ようと汚職に手を染める政治家達及び企業家の三つ巴の闘争を描くクライムサスペンス

・鑑賞理由
世界中で人気を博し社会現象となったスペインの長編ドラマシリーズ「ペーパー・ハウス」のリメイク作品で原作がとても好きだったのでパート1に続いて鑑賞

・感想
パート1では南北統一という朝鮮半島を舞台にした作品ならではの面白い改変要素が十分に活かされていなくて残念に感じていた
特に南北それぞれの出身者達の間で発生する確執の激しさが弱かった点と原作を変に忠実に踏襲しようとしてかデンバーの笑い方をそのままトレースしていたりその割に強盗団の面々のキャスティングが原作の良さを潰す様な物になっていた点、原作よりも絵面の迫力や緊迫感に欠けていた点などが目立った
最も惜しく感じたのはキャスティング
まずは教授について
原作では教授は類い稀なる知性と計画能力、対応力などを見せつつもナード的な情けない風貌と時折見せる臆病さなどがある事で親しみの持ちやすい人物となっていた
それに対して今作の教授は原作同様に追い込まれながらも見るからに腹の読めない優秀な人物に見えてしまう雰囲気となっていたのが残念だった
次はトーキョー
原作同様、トーキョーは強盗団で最も若いリオに惚れられていて彼をかわしたりからかう様子やそのミステリアスな妖艶さに溢れる女性として描かれている
気になったのは雰囲気やオーラの違いだ
まだ若いリオのアプローチを笑っていなすお姉さん、というのがトーキョーの魅力となっていたのに今作では2人がさほど年が離れて見えないし振る舞いから漂い余裕も足りていなかった様に感じる
そしてデンバー
原作ではいかにも軽薄なチンピラでありながら根っ子は善人という人物像にちょうど良い風貌の役者が採用されていたけど今作のデンバー役の俳優はシュッとしたイケメンになっているせいで笑い方や喋りの粗暴さなどを真似ていても放つ雰囲気が違いすぎた
最後はベルリン
原作では根っからの悪人で感情の起伏が激しく扱いづらい人物でありながら周囲の人物を掌握する様子と邪悪に笑いながら計画を遂行していく姿の放つ強いカリスマ性が魅力的なキャラクターとなっていた
今作では脱北者という設定を強調する為なのは分かるけどそれにしても訛りのキツい喋りが田舎臭すぎて力強さが弱まっていてカリスマ性に欠けていた
兄である教授が韓国人として生きてきた事で訛りが消えていた事もあるしもう少し普段は訛りを弱め感情を爆発させる場面でだけ強める様な演技指導をしても良かったと思う

続編となる今作、パート2ではキャスティングは変えようがないのでともかく、そういった部分が改善されていたのが良かった
まずデンバー役の原作を真似た笑い方が無くなっていたのがパート1で全編に漂っていた安っぽさをかなり改善していたと思う
そしてベルリンも訛り具合こそ変わらなかったけど原作よりも人間臭さが強調されていた事で違った魅力のある人物になっていて良い意味で素朴さも併せ持つ感じが原作よりもスケールが縮小された世界観に合っていた
あとは教授
パート1よりも追い込まれる場面が増えたと共に元来の弱い部分もある人物像がよりしっかりと描かれていた
特に最終話で警察に突入され万事休すとなった際の諦めと悲嘆に喘ぐ姿はとても良かった
最後に絵力
ナイロビの息子をサンマンから救出する為に監禁されていた別荘に突入し厳重な警備をかいくぐっていく場面での激しいカメラワークとアクションは特にめちゃくちゃ良かったし、より激しさを増した銃撃戦も迫力満点だった

でもやっぱり今作でも惜しかった点があった
1つ目は教授の正体がソノであると知ってからのソン警部の変化
原作では正体を知った上で警察組織や元夫を中心とした権力者達の行動に絶望し、教授達側に寝返る描写がもっとあった記憶があるんだけど今作では彼らが逃げ仰せた後に逃亡先に向かって教授と再会する場面だけで、それによって善悪の境目のゆらぎが弱まっていた感じがする
2つ目は一般市民達が強盗団への支持に回って事件の展開を固唾を飲んで見守る展開があまり活かしきれていなかった点
市民を守るはずの警察達が境界線となって大衆と強盗団が向き合っている場面の壮大さが市民達の人数の少なさや彼らの怒号や歓声が原作より弱くなっていた事によって登場する勢力の構図がちゃちに見えてしまった
3つ目は強盗団脱走後の権力という巨悪への対抗を現実の一般市民である視聴者にも呼びかける様な原作の造幣局パート終盤におけるメッセージ性が今作では弱くなっていた事
現実世界とフィクションの世界を繋げる事で壮大さを増幅させたあのエンディングが好きだったのであくまでフィクションとして締め括られてアナーキズムが核となっていた原作の世界観と別物になってしまっていた様に感じる

原作同様に造幣局強盗が幕を閉じた後に再びメンバーが結集し次の計画を実行する続編が製作されるのかどうかは分からない
けどもし製作されるのならその時はここまで書いてきた様な残念な部分をもっと解消して南北統一という改変要素をよりしっかりと活かして欲しい

・総括
欧米にせよ中南米にせよアフリカにせよ一定以上の治安の悪さや東アジア圏とは全く違ったスケールで物語を描く支えとなっている陽気で激しい国民性などを持たない東アジアの国がリメイクでどこまで再現出来るか、というのは確かに難しい課題だと思う
それを踏まえれば今作が原作よりやや陳腐になってしまっていたのも仕方ないとは分かる
けど韓国オリジナルのドラマでも「バガボンド」や「シーシュポス」等の様に壮大で激しい世界観を見事に描いた作品もあるしリメイク作品で言えば「サバイバー」なんかはリメイクの意義を強く感じられる作品だった
なので今後もこういう世界的な人気作品のリメイク作品自体はめげずに韓国で製作されてほしいなと思う
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