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薔薇の名前のhiのレビュー・感想・評価

薔薇の名前(2019年製作のドラマ)
4.0
原作は未読だが、映画版は好きで何度も見ている「薔薇の名前」。

本作のアドソは心身ともに強く、非常に自立している。自らの意志でウィリアムに従い、自らの意思で娘と愛を育んだ。
一方でバスカヴィルのウィリアムも非常に魅力的だ。ジョンタトゥーロの演技により奇抜な一匹狼感が出ており、かなり味がある。
ドラマならではの長尺で、ウィリアムの見事な観察による推理や、ギーとの言論の一騎打ちが楽しめた。

多方面での丁寧な描写はドラマならでは。
“異端”とは何なのか、正しいとされているものがいかに汚かったか、誠実に描かれる。
2話の、ギーから民への仕打ちがキツい。
こんなんが正義なわけあるかいというのが非常にわかりやすくて良かった。
ルパートエヴェレット演じる心底憎らしいベルナール、すごいな。

また、娘とアドソの交流にも尺が割かれてて良かった点である。性暴力を受けたトラウマは愛する人を前にしても消えはしない。
本作では娘のキャラクターに奥行きが感じられ、より感情移入してしまう。彼女がもうこれ以上辛い目に遭わないようにと終始祈ってやまなかった。
そしてドラマオリジナルキャラクターであるらしいアナをめぐる物語も見応えがある。彼女は父ドルチーノと母、夫と息子さえもベルナールに殺されて復讐に燃える。正義を振りかざし弱者を痛めつけるベルナールを憎む存在は数多いたことだろう。

7話の審問にかけられたレミージョの迫真の“告白”が強く印象に残る。哀れなほどヤケクソで、憎しみに塗れた、罪の“告白”には鳥肌が立つ。その後のアナに対する告白のシーンも胸糞悪くて良かった。

最終話、「その後」が明確に語られないキャラクターが多くいるのが気になった。あくまで主人公であるウィリアムとアドソが知り得ないことはあえて描写しないスタイルなのかしら。
ラストがやや駆け足であったのが少し残念。余韻ををもう少し味わっていたかった。

ともかく濃厚な8話であった。
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