ねまる

太陽は動かない -THE ECLIPSE-のねまるのレビュー・感想・評価

太陽は動かない -THE ECLIPSE-(2020年製作のドラマ)
4.2
1話
羽住英一郎監督作品だけあって、ドラマでも映画レベルのクオリティ。
爆破シーンも、ロケの規模も、映画と変わらず撮っているというのがよく分かる。
映画館で流せるクオリティで、6時間かけて描く前日譚。

最近4Kのテレビに買い換えて良かったです。

藤原竜也と、竹内涼真の産業スパイバディは、ワイヤーで吊るされながらの爆弾解除シーンなどハラハラ・ドキドキな展開と、政治の思惑を巡るサスペンスで、これからのストーリーを楽しみにさせるスタート。

2話
24時間以内に報告しないと心臓の爆弾が爆発するという設定を活かしきった1時間。
香港にいる市原隼人と、日本の藤原竜也と竹内涼真の同時並行でハラハラさせられるのも面白い。
市原隼人、かっこいいなぁ。映画版でも出てくるらしいので楽しみ!

黒幕の影が見え隠れしてくる内容で、まだ頭の中がさっぱりだった1話から、ストーリーとしての面白さにも踏み込めた回。

酒向芳さんの、怪しい感じが効いていて、良いキャスティングですよね。

桜井の出番をやたら焦らすけど、最後でようやく顔が出たら相変わらず美しくて、焦らされたことを許しました。
待ちに待った登場がタバコ吸ってるだけのシーンだもんな。絵になるぜ、全く。

3話
1.2話で起きていたこと、
事件の構図、その裏で誰が何をしようとしているのかの関係性が分かってくる。
そして、このドラマの主題が何なのかの方向性が明確に示された回だと思う。

石橋蓮司、吉田鋼太郎、柿澤勇人の政治家チーム、中国との利権、そこに多部未華子と佐藤浩市がどう絡んでいるのか。
改めて書いて豪華なキャストだなぁ。
牙を研ぎ続けた吉田鋼太郎が面白い。

鷹野と田岡がエージェントとして所属し、佐藤浩市が指揮を取るAN通信とは何なのか。存在しない人間たちの苦しみや悲しみ。
そのそれを、鷹野と桜井の関係性によって描いていくのがこのドラマなんだなって。2人のちょっとした会話からみえてくる話だった。

4話
1話を通して、現在と過去、語り手を変えながらも描かれるのは、
14歳でエージェントとなった鷹野と、彼の面倒を見た先輩エージェント桜井の話。
適当で、自由人で、女好きで、派手な物好きな困った先輩に振り回されて、どちらがどちらの面倒を見ているのか分からないような関係性も、
カップ麺のお湯入れる時間待てずにバリバリ麺を食べたり、ビールをわざと振って泡をかけたり、真面目かよが口癖だったり、すぐ笑えよって言ってきたりする桜井の変人さが、
鷹野にとって大切な思い出だったという過程が丁寧に描かれるすごく好きな回だった。

本当の家族がいないエージェントだけれど、鷹野と桜井は互いにとって家族のような存在だったんじゃないかって。
正直な気持ちは話せないけど、色んなことを認めたら会ってはいけない存在だとわかっていても、2人で過ごした6年間は家族だったんだって。
派手なアクションは無いけど、その分グッとくる人間ドラマが詰まっていた。

5話
この物語を巡る勢力図に変化が起こる。
蠢く思惑を操る表の政治と裏の駆け引き。
証拠品ならぬ、証拠人として、全陣営から狙われるフクモトと桜井を助けたい鷹野を軸としながらも、政治や社会について鋭い棘を突きつける。

中国チームのチーヨウのアクションシーンがこれまでとは違った撮り方で、いかにもチートなゲームのようで面白かった。
武器を出せって言われて、体中から銃を出してくるシーンも好き。
こいつに勝てんのかな?誰が戦うのかな。

それにしても1時間の密度が濃いドラマだ。中弛みが無いことをあっという間というけれど、展開の詰め込みとアクションと登場人物の書き込みでみっちみち。
あっという間は褒め言葉じゃ無いんだな。
この密度を楽しませてくれる作品に感謝。

6話
鷹野〜、お前どんだけ桜井のことが好きなんだよ。鷹野〜。
感情を表に出さない奴ほど、心の中でクソデカ感情抱えてるよな、ほんと。
くるくる回るライトで見え隠れする表情とその映像が抜群にかっこ良いんだこれが。
あぁ、エモい、エモい、とにかくエモい。
鷹「もう俺の前に顔出さないでくださいって言ったじゃないですか」
桜「お前から来たんだろ」
このやりとりの背景こそが二人の関係性なんだよね。
極め付けは、
桜「俺は最初から存在しなかったことにしてくれ」
鷹「無理ですよ、桜井さんは俺の中で生きてます」
コインロッカーに捨てられた子供が、組織の一部として誰からも記憶されないように生きてきた。そんな人間だったのに、誰かの一部になっていたなんて、そんな…
あとね、地味にね、
チーヨウが復活して襲い掛かろうとした時、横にいた桜井を自分と田岡の後ろに無言で突き飛ばした鷹野、私見てましたからね。
どうせ散る命だと思っている桜井も桜井で、散るからこそロマンチックに演出するそんな人間だからなぁ。なんだよあのカウントダウン映像。
カジノの利権?都市博?政治?んなもんどうだっていいや。鷹野と桜井の話としてめちゃくちゃ良かった。
鷹野と桜井の再会が、鷹野が田岡の先輩エージェントになるというところまで繋がって、繋がって、繋がって、映画版へと繋がる。
単体のドラマとして自立しながら、単なる前日譚で終わらせない良いドラマでした。
ねまる

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