龍星

THE LAST OF USの龍星のネタバレレビュー・内容・結末

THE LAST OF US(2023年製作のドラマ)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

原作ゲーム未プレイ、実況プレイを観ていたので気になって鑑賞。
菌類によるパンデミックで崩壊した世界。20年前、パンデミック発生時に娘を失ったジョエルは娘と同じくらいの年齢少女エリーを”運ぶ”ことになるが…という話。
原作ゲームのシナリオがそもそも素晴らしいのに、それをさらに深く掘っていったり、構成を変えて強いメッセージを押し出したりして、本当に観てよかったなって思った。パンデミックというと、『バイオハザード』シリーズに代表されるウイルスものが多いと思うんだけど、ラスアスではこれが菌類なのが新しいし、実写になったことでこれが「気温の上昇によって人間にも寄生できるようになった」という設定が足されて説得力と社会問題への訴えを同時に押し出したのが見事すぎた。クリッカーを始めとしたクリーチャーによるホラー演出も素晴らしいんだけど、ドラマとしてそれぞれの人間ドラマを描くのに余念がなかった。20年前に娘を失くした後悔やこの先誰かを失うことの恐れを誰よりも抱いているのに、それを表に出さない(出せない)というある種の有害な男性性の間で苦しむジョエル、自分が抗体を持っていることで友達も家族もいなくなって孤独を恐れるエリー。二人が旅の中でお互いを知り、少しずつ傷を癒していく様子とその結末が苦しくもあり素晴らしくもあった。他の人物の話や背景も儚く美しいんだけど、やっぱり特にビルとフランクをじっくり描いた3話が良すぎた。ゲームだとそんなに触れられない二人だけど、丸々一話使ってビルのパンデミック前から抱えていたであろう孤独、それをゆっくり溶かしたフランクとの愛、老いた二人が選ぶ結末が描かれたのは、セクシュアルマイノリティがどうのとか、パンデミックの世界だからとか関係なく、誰かと生きることの美しさ、辛さ、残酷さを顕微鏡通してみたような感覚だった。
ドラマになったことで使われる音楽も格段に増えてた。パンデミック前までにリリースされてる曲を用いて、登場人物の心情をより分かりやすく映すだけでなく、「2003年で娯楽の発展が止まりきっている」という世界観の描写をすんなりとやってのけていたように思う。1話ラストのDepeche Mode(90年代)の楽曲のような、舞台装置としても良かった。ゲームと同じDavid Flemingの音楽も良かった。これだ!ってなる。このシリーズ通してだけど、「はい、ここで感動してください!」みたいな音楽の流し方が全然ないの、すごく観客を信用してくれているんだなって思う。(これに関しては、回想と称してそれまでの話に出たシーンを流用することがほぼないことにも感じた。)
実写になったことで、自然風景がとんでもなく綺麗に映ってるのにも息をのんだ。ジョエルとエリーの旅の道中で結構ロングショットが挟まるけど、荒廃したビル群のくすんだ色や手つかずの美しい色彩を浴びるように魅せてくれるのが良かった。
俳優さんたちの演技も本当に良かった。エリーが本当にゲーム版と同じキャラだなって思うし、逆にジョエルは時々滲む苦しみが彼をもっと人間らしいキャラにしてくれてたと思う。
シーズン2決まってるし、ストライキ後の報道だとHBOはその脚本を優先的に書くらしいんだけど、どうなるんだろう。未プレイかつ実況未視聴の私でさえ知ってる序盤のあの展開。哀しみへの準備をするべきだろうか。
龍星

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