ぴろ

屋根裏のラジャーのぴろのレビュー・感想・評価

屋根裏のラジャー(2023年製作の映画)
4.2
スタジオジブリで活躍したプロデューサー西村義明氏が、2015年に新たに立ち上げたアニメーションスタジオ・ポノックの最新作。少女の想像によって生まれたイマジナリーフレンドを主人公に、現実と想像が交錯する世界で起こる冒険を描いたファンタジーアドベンチャー。

不覚にも泣いてしまった。
しかもクライマックスではなく、序盤の雪の世界で冒険するラジャーとアマンダのシーンで。とにかく子供たちが無邪気で、自由で、自分にもこんな風に無限の想像の世界で元気いっぱいに遊び回った時代があったな、と思い出された。
映像もいい。絵のタッチはジブリ味を残しつつ、さらに表情が豊かに、繊細になった。そしてアクションやカメラワークはCGを適度に取り入れることでより迫力や臨場感が増し、物語への没入を支えている。
さりげないけれど、お母さんがビー玉を拾い上げてしげしげと眺める場面も印象的。そういえば、子供の頃はああいうキラキラしたものに無性にわくわくして、宝物と言って集めていたな、なんて。もうほとんど忘れてしまっていたあの頃を、そんな細かい描写の数々で思い出させてくれる、切なくも素晴らしい作品。


〜メモ〜
・ラジャーの声はなんと寺田心くん。制作が声変わりと被ったため、映像より先に声を録るプレスコ方式で収録。
・フランスの会社が開発した、キャラの表情に陰影を施すことができる独自技術を取り入れ、手書きアニメ×CGを実現!
・西村氏「手描きアニメは、作り手が“線”を選び取って、『この世界はこうである、こういうふうに伝えたい』と考えながら1枚1枚を紡いでいます。『このシーンはこういう心情だ』『このときこのキャラクターは幼く見えるけどラストシーンはたくましく見える』というように絵は変えられる。これに対し、CGは、1つの空間と1つのモデルを作ったら表情は変わるけれども、基本的に形状は変わらない。手描きアニメの方が自分たちが感じる世界の見方を映像に込められるところが一番の魅力です」(NHKのインタビューにて)
ぴろ

ぴろ