ぴろ

SHE SAID/シー・セッド その名を暴けのぴろのレビュー・感想・評価

3.0

他のみなさんが本作について鋭いレビューをしているなかで恐縮ですが、僕は正直、こういう性加害といったテーマが苦手で、なかなか目を背けがちです。
というのも、男の性に対する欲望の底のなさというのを、自分の内にも微かに感じるからです。
もちろん、僕は性暴力なんてしたことがないし、そういうニュースを見かけるたび、許せないと怒りが湧きます。しかし、少し状況が違えば、例えばワインスタインのように何でも自分の意のままにできるような強大な地位を手に入れてしまったときに、僕はそんなことをしないと100パーセントの確信を持って言えず(いや、気持ち的にはしないと断言できるのだけれど、あくまで蓋然性の話)、自分自身が汚らわしく感じてしまうのです。だから本作を観た時はすごく居心地の悪い気持ちがしました。

ところで、朝日新聞では最近「子どもへの性暴力」という連載で、加害者側の心理を深掘りしています。読んでみてこれは確かにちゃんと報じるべきだとは思いましたが、だいぶ生々しいところまでしっかり書いていて、ふと、性犯罪者への取材の場を想像し、自分ならこんな話は絶対に聞きたくはないなと。でもきっとそれは記者の人たちも同じでしょう。

朝日の連載しかり、本作しかり、ジャーナリストたちは、普通の人なら聞きたくもないような話を、普通の人に代わって当事者から直接聞き、本当に伝えるべき部分を抽出し報じています。なくてはならないすごい仕事なんだな、と感じました。
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