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恋は光のHrtのレビュー・感想・評価

恋は光(2022年製作の映画)
4.3
「前にカップルが座ったら最悪でな。画面が光で見えんのだ。」というセリフに思わず笑ってしまった。
恋する女性から光が見える、といういかにも少年誌らしい特異能力を持つ西条だが、そのギフテッドとは裏腹に恋をしたことが無くそれが何なのかも分からない。
これはかなり矛盾している点だがそんなことは関係なくやがて明かされる彼の出自ともそんなに関連性はなく進んでいく。
正直言えば恋を真ん中に据えて議論する東雲と西条の説も自分はいまひとつメイクセンスできなかった。
それは実際の自分が明らかに宿木的な価値観だからなのかもしれないが、とはいえ彼らの議論を低く見るつもりはない。
基本的に生殖本能の一環だと認識している「恋」だが同性を好きな人からも光が見えるということでそれもまた違うんじゃないかと感じた。
そうなるとやはり本能的であると同時に学習認知作業なのかもしれない。
宿木からも光が放たれてるところが最大のヒントだったのかも。
これらの会話にはアルコールを介しての自己開示が必要とされている。
まあよく飲む。クロスカッティングでどっちのシーンも飲んでるという衝撃。下戸の自分はウェッと思うくらい飲むシーンが連発する。
ちなみに「すいません。出ませんでした。」も好きなセリフだ。
西条は東雲を通して恋を少しずつ理解していく。
変わりゆく彼女を前に自分の抱いている感覚を学習に転じていく。
その過程に寄り添う北代という最高の幼馴染。この西野七瀬は西野七瀬史上最強の西野七瀬かもしれない。
会話の声のトーンや間の取り方や受け方どれをとってもぴったりと役に沿っていて彼女を見ているだけで引き込まれてしまった。
まさか遊びに連れてってが川釣りになるとは。
この岡山でのロケーション撮影が本作で一番印象に残った。
やはり映画というのはロケ地にこだわってナンボではないかと思った。
東雲宅へ向かう電車とバスの道中。一方で文化的な一面を見せる大学のキャンパスや美術館前など、あと印象的な路面電車も。
所々で歴史を思わせる地方都市をフル活用しての撮影はとても瑞々しく映り、行ったこともない土地への憧憬を感じさせてくれる。
恋を知らない西条と東雲でも待っている結末は正反対のもので誰か東雲のケアをしてほしい。西条を通して恋というものを知れたというポイントだけにおいて彼女の成長とも取れるが、かなり男性視点的な悪い側面が出てしまったと思う。彼女の美しい涙が余計に辛さを滲ませている。
成就後も北代は光っていないことを確認する西条。だがそれも北代自身が自分にとっての光であり「恋は光なのだ。」という確かな実感をもって彼女を見つめる。
彼女たちに感化されたような宿木も含めて全員が本当に魅力的なのがとても珍しく素敵な恋愛讃歌だった。
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