「映画を見る上で大事な物が三つある。それは約束、愛、そして――」
世界がたったひとりの少女によってコンピューター上に作られたものであったことを知り、そしてその少女を救うための戦いから一年。
主人公たちは平和な日常、そして青春を取り戻していた。
戦いを経て、電光超人と一心同体となっていた少年・ユウタは、片思いの相手・リッカとの距離も縮まったが告白するタイミングを逸しており、そしてついに学園祭のあとと定めた。
リッカは、ユウタの親友でもある戦友:ウツミと共に学園祭での演劇として「グリッドマン物語」の脚本を担当していたが、グリッドマンの記憶のないクラスメイトたちには不評だった。
そんな中、世界にふたたび異変の影、すなわち“怪獣”が現れる。
世界を救うべく再び訪れる電光超人、そして新たな仲間レックス(ガウマ)たち。
はたしてグリッドマンたちはこの世界に訪れた“危機”の正体を突き止め、“世界”を救うことができるのか?
そしてグリッドマン物語は上演できるのか? ユウタの告白の行方は? 世界の謎とは?
特撮版、そしてアニメシリーズ2作品を経て初の映画化。
……長かった……待ってました……!
このレビューの筆者は、特撮版グリッドマン直撃世代で、自宅には遊びすぎて刀身のプラスチックが裂けたグリッドマンソード(サムライキャリバーの元ネタ)がありますす。
グリッドマンは特撮低迷期、というか、爆発的人気のあった昭和が収束した平成初期の作品であり、
バブルの崩壊で円谷プロ主力ブランドであるウルトラシリーズですら苦戦していたあの時代。
インターネットという言葉も浸透しておらず、パソコン通信とか呼んでいた時代で、コンピューター世界の戦いを俺たちに教えてくれたグリッドマンが、とうとうスクリーン・デビュー!
シナリオはアニメ版2作品が軸となるが、特撮リアタイ組としても嬉しい演出が数多い。
「掃除機からの脱出」とか「孤独なスニーカー」とか、分かる人は分かるけど、わかんなくても別にね、っていう。
個人的に一番アツかったのが、「あの場面」で「あのBGM」が掛かったところ。
特撮グリッドマンのOPとかはテレビシリーズでも使われていたけど、一番印象的なのはあのBGMなんじゃないかな。
あれが満を持して、あの場面で使われる! 日常パート最高かよ!
で。今回はアニメ2作品目、ダイナゼノンにおいて説明されなかった謎がとうとう明かされる。
そもそもアニメグリッドマンで登場した不文律として、「現実世界は実写、それ以外の世界はアニメにおいて描写される」というルールが示唆されている。
そのルールに従えば、もちろんダイナゼノンは「現実世界ではない」ことになるのだが、ガウマの正体は特撮版の現実世界に実在したある人物。
つまり、ガウマが存在しているのに現実世界ではないという奇妙な世界で、
そしてダイナドラゴンという特撮版で登場した武器そっくりのダイナレックスを扱う。
その謎はダイナゼノン本編で明かされなかったが、「グリッドマンユニバース」が全てを説明し、むしろ伏線だった。
「グリッドマンユニバース」。
全てはこのタイトルに内包されており、ある意味でガウマの存在自体が優しさだったのだろう。
特撮版を意識した要素がテレビシリーズから多数登場するが、それの答え合わせでもある。
本作でも「バイク」が登場するが、つまり、そういうことである。
本人ではないが、つまり、彼の中の彼は、困ったときに彼を助けてくれるのである。
それがすなわち、最終決戦でのグリッドマンの言葉の意味である。
グリッドマンはヒーローである。
心を擦りむいても怯えないでいい。“キミ”は独りではないのだ。
特撮版オープニング……! ムネアツ……!
奇々怪々な状態とはいえ、ついに並び立つグリッドマンとダイナレックス。
コアロボ系のロボットだとお約束といえる「着せ替え人形」的妄想も、ああいう形で表現。待ってました……!
グリッドマンとグリッドナイト。
タイトルの意味を説明してからは怒涛の必殺技ラッシュ、そして彼女と彼女のアレは、まさに総力戦!
アニメ2作品において実質的な主人公として活躍してきたグリッドナイトことアンチくんの物語としてもキレイなシーンが用意されている。
アンチくんは新世紀中学生と違ってグリッドマンの一部ではないので
待ってました……! これを待ってました……! みたいなシーンが続く。
で。
明らかに続編への要素が残ってるんだよね。「不死身の男」の話とかだけでなく。
不死身の男は「ルパンと銭形」みたいにシリーズ化して欲しいよね。
他の最たるところでは、ダイナゼノンでの敵キャラ、怪獣優勢思想。
ガウマがダイナドラゴンの一部として現れたとすると、優勢思想はガウマに引っ張られてあの世界に出現したということになってしまい、「お姫様に託された」っていう説明と齟齬が出てしまう。
「なぜお姫様に託されたはずのアイテムが、平成の少年がデザインしたダイナドラゴンの姿を模しているのか。」
そして「ニューオーダー」がインスタンスドミネーションを使用できたこと、そしてその服装が怪獣優勢思想に共通する意匠を持っていたことも不可解。
そもそも、なぜ5000年前の中国で、優勢思想があんな服装をしていたか。
怪獣は時間や空間、生死すら超えるということは、つまり……?
そしてかなり客演とか声優さん選びにも全力な作品で、なぜか特撮版ラスボスのカーン・デジファーの佐藤正治さんだけスルー。
続編、期待してます。