Kachi

サバカン SABAKANのKachiのレビュー・感想・評価

サバカン SABAKAN(2022年製作の映画)
4.8
傑作

邦画でダントツで好きだったのが「湯を沸かすほどの熱い愛」だが、本作もそれに匹敵する感涙ものだった。

導入ー
よくありがちな、しがない物書き(しかも妻との関係も微妙な)の日常に現れたサバ缶から一気に過去の回想へと誘われる。よくある学校風景、典型的な貧乏家族といじめっ子たちという分かりやすい舞台設定に、はじめは観る映画を間違えたと思った。

否、ここから1時間の間に紡がれる無垢な友情、一夏の冒険は、自分にそんな原体験などないはずなのに、私の心の奥深くに装填されていて、その記憶を喚起させられた…とそんな気にさえさせられた。

臆面もなく「ぼくたちは友達だ」と言い合い、いつ会えるとも分からぬ「またね」を交わした2人の物語は、部分的にしか描かれていない。しかし、僕たち/私たちはきっと小さい頃に竹ちゃんや久ちゃんであり、見送ったり見送られたりしていたに違いない。

最近、心穏やかに過ごすことが難しい出来事が立て続けに起こり、映画館へ向かう足も遠のいていたが、こんな良作を見せられては、また足繁く通ってしまうではないか…!
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