WadeZenta

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのWadeZentaのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

異次元

アクション最高!と言いたいが、そこに隠されたテーマが深すぎて、そっちに終始心を奪われた。


マルチバースといえばマーベルの十八番という感じだが、もう今後は映画の設定としても市民権を得てきそうだ。切り取り方次第で色んなマルチバースの使い方があることに感心させられた。

『ドクターストレンジ・マルチバースオブマッドネス』もそうだったけど、本当に脳みそが吹っ飛んで行きそうなジャンピングの演出がクセになる。
(でも見せ方としてはそこまでの目新しさは感じなかったかな?)

他の世界の自分は決して自分にはなりえないのに、自分である。
映画のタイトル『エブリシングエブリウェアオールアットワンス』というタイトルが映画のマルチバースという設定を通して見ることでその輪郭を掴むことができる。


しかし、全体を通してみたときにジャンル的にどんな映画に近いかと言われたら、劇場版クレヨンしんちゃんだと思った。
笑いの感じもよくよく考えるととことんくだらない。そして何より、クレヨンしんちゃんが毎回大事にするのと同じような「家族の物語」であるからだ。

母を主人公にするあたりが憎い。大体、敵は親と相場が決まっている神話的な物語構造を、あえてそうすることで、母が子どもにコミュニケーションを試みるような形になっている。「ほんっとうにお母さん、分かってない!」、そんな感じのよくある親子。

よりリアルな家族の物語に落とし込むことに成功しているように見えた。

言ってしまえば、宇宙を巻き込んだ家族という最小単位のコミュニティーの不和を解消する物語。もっと言ってしまえば、家族でコミュニケーションしようぜ!っていう物語。




この映画を動かす装置は「ディスコミュニケーション」だと感じた。
映画冒頭からとにかく会話をしているようでちゃんとした会話が出来ていない。
それはマルチバースの設定もまさに。
一番最後の「すみません、聞いてませんでした。」というセリフがとても印象的。



好きな人とキスをすること、大事な人とハグをすること。それをするだけなのに何躊躇ってんの?手を伸ばせばいいだけじゃん。と不思議そうに首をかしげている、そんな映画だった。


とまあ、一見綺麗なようにまとめてみたけど後半は色々な世界が文字通りアットワンスに描かれていて、ついていくのに必死でした。

もう一回見ないと分かんないことがたくさんありそう。多分もう一回見る。そして、アクション最高!!!!



〈キーワード〉
・ディスコミュニケーションは距離、そしてマルチバース
・新しい家族の物語
・ジャンピングのシーン
・キーホイクァンだよ!!
・「目」とコインランドリー
WadeZenta

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