Longsleeper

すずめの戸締まりのLongsleeperのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.5
めちゃくちゃ久しぶりに映画館で映画を観た。
すずめの過去が昇華される場面ではめちゃくちゃ泣いてしまった……

新海誠作品の「世界(普通の人々の普通の日常)を救う」「会いたい人に会いに行く」の二本柱は変わらないけど、君の名は。より天気の子より今回が一番好き。
すずめの個人的なドラマと、世界を救うことの必然性がしっかりリンクしていたし、それが全部結びつくラストのカタルシスは凄かった。
彗星より異常気象より、日本で映画を観る人にとって一番身近な危機だからかもしれない。
終わり方が3作の中で一番ドラマチックだしスッキリする。
天気の子より理屈がしっかりしていて納得感あった。
あと、大人不在感が過去2作と比べて格段に減っていたのは環さんのおかげ。

序盤の伏線張りタイムは正直もたつくと言うか、何だこれと思う描写も色々あるけど、三分の一を超えたあたりから俄然加速し始める。
音楽と映像の迫力が凄いのでぜひ映画館で観てほしい。

以下ネタバレ含みます。

すずめの過去の夢をトップシーンで見た時、パッと北海道っぽいと思ったので、絵日記を掘り起こすまで何があったのかまったく気づかなかった……事前情報全くなしで観たからこその驚き。
日付を見た途端あれもこれも伏線が結びついて(すずめだけ九州弁じゃなく標準語(だから余計北海道かと思った)、死ぬのは怖くない・生きるか死ぬかなんて運でしかない発言など)、そういうことだったのかと衝撃だった。
北海道かと思ったから北上してても何も思わず(ミスリードされすぎ)。
でも、チラっと映る地名はどれも、あの頃ニュースで何度も見たところばかりだった。
家が基礎しか残ってなくて真新しい防潮堤の真横というところでようやくあれっと思った。
こんな広大でひらけた土地北海道にしかないと思ったけど、それはあの時だからこその光景だった。
常世に飛び込んだすずめの見る火の海は、あの日の気仙沼の夜のニュース映像にそっくり。
考えてみればダイジンの行く場所は神戸とか東京とか、震災が起こったところばかりだった。
予告編が多くを語らない構成だったのは、トラウマを持ってる人たちへの配慮かなと思った。

要石のダイジンが役目をもう一度受け入れてくれたのは、「ありがとう」と言われたかったからなんだと思う。
痩せ細るまで務めを果たしても誰にも顧みられないことに飽きて逃げた。
うちの子になろうと言われるものの突き放されるところがすずめと少し重なる。
左大臣かっこよかった。

ずっと泣き続けている幼い頃の自分は、根本的には自分自身で癒すしかないというメッセージがある気がした。
大切な存在に巡り合ったすずめにその用意ができたとき、その瞬間がやってきたというのが良い。

すずめの苗字「岩戸」は、神話上で開かなければならない扉だったけど、草太の苗字「宗像」は旅の安全を守る神様がいる場所。
草太は閉じ師でありつつ、あくまですずめの成長に寄り添う旅のパートナーだったのかもしれない。

監督は本来、君の名は。で再会のラストを望んでいなかったと聞いたことがあり、「このままってことないよね?」と後半は終始ハラハラしておりました。
こんなこと誰にも言えないけど草太の人物造形が性癖ドンピシャ。
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