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ザ・ウォーター・ウォーのLongsleeperのレビュー・感想・評価

ザ・ウォーター・ウォー(2010年製作の映画)
4.0
映画撮影のためボリビアを訪れたクルーが、民営化された水道事業の急な値上げに抗議するコチャバンバ水紛争を目の当たりにする話。
短めということもあり、全くダレない映画。

劇中劇となる映画では、インディオたちの悲惨な状況に心を痛めた聖職者ラス・カサスが活躍。
その前に描かれる、コロンブスによる先住民からの金や労働力の搾取がえげつない。
突然やってきて金を取り立てて、従わない人は容赦なく弾圧処刑して、という構図が、水資源を押さえられてたボリビアの状況と重なる。

郵便や電気ならまだしも、生命維持に直結する水道事業を民営化して、しかも外資に握られ、あまつさえ料金を数百%も値上げするなんて、人間のすることかと思うけど、これがほんの十何年か前に起こったことだという。

ダニエルたちがケチュア語を話してるということは、南米で何とか先住文化の痕跡が残ったインカ帝国の残滓がある地域な訳で、そこですらこんな状況なのを見ると、他の地域ではもっと先住民族は虐げられてるのではと思う。
当時最も先進的だったインカ文明ですらボコボコにされたわけだから、他の地域はもしかしたらコンキスタドールに壊滅させられたのかも知らんけど。。。

最初は映画を作る使命感に燃えていたセバスチャンやラス・カサス役の俳優だけど、状況が悪化するにつれ欺瞞が明らかになる。
映画のためにしたくないこともしろと日給2ドルのエキストラに強要しようとしたり、こんな危ないところ出ていくと真っ先に訴えたり。
キリスト教徒様の傲慢という感じ。
君の映画より大切なことは世の中に沢山ある、と言われて絶句してるとこが印象的だった。

一方、映画の意義や先住民との関わりに冷笑的だったコロンブス役の俳優や、コスタの態度は思いがけない方向に変わっていく。
自分たちの醜い部分を否定しないという意味では、彼らは最初から誠実だったのかもしれない。
自分は良い父親じゃないって率直に認めてるし。
最初は映画のためだけに機嫌をとってた相手から、いつの間にか何かを学んだのかも。

植民地時代と現代が重なり合う構成は良かったけど、欲を言えばもっと水道問題の背景について深く掘り下げてほしかった。
勉強するのにいい本とかないかな。
邦題は直訳の『雨さえも』のが良かったと思う。
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