くるみ

すずめの戸締まりのくるみのネタバレレビュー・内容・結末

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

公開前に「地震の描写があるのでトラウマがある方は注意が必要」的なコメントが出されていたのは知っていたけれど、ろくにあらすじを調べなかった私はここまでガッツリ震災に触れているとは思っておらずビックリしました。
せいぜい地震警報のアラームが鳴るとかちょっと揺れるとか、その程度だと思ってました。
もはやほとんど今回のテーマです。
そこをもっと大々的に言っておかなきゃ。
3.11からもう10年以上経ってはいるけれど、エンタメに昇華できるほど傷が癒えていない人は大勢いると思います。
そういうことを考えると、安易な気持ちでこの作品を面白かったと言っていいのかどうか複雑な気持ちでした。
もちろん決してふざけて地震を扱ってあるわけではありません。
新海作品はほとんど観ているけれど、今回が一番伏線も綺麗に回収されているし、内容もまとまりがある気がします。
映像も音楽も相変わらず最高に美しい。
声優さんもみんな上手くて、すずめの声を演じていた若い女優さんもよかったです。(「なになになに〜」と「嘘でしょお⁈」ってセリフがやたらと多いのが気になる)
松村北斗の声は元々苦手だったけど、草太のビジュアルにはすごく合っているなと感じました。
神木くんに至ってはどこに出ていたのかわからず、エンディングで知ってビックリしました。
作品にスッと溶け込んでいるところ、やっぱり上手いなぁ…

内容は『鹿男あをによし』とちょっと重なるところがあります。
扉を開けてしまう、抜いてしまう、無責任な発言で相手を傷つけてしまう…などなど、全てすずめのせいな気がしなくもないけれど、ここでいう "戸締まり” とは過去に受けた心の傷に一区切りつけて新しい一歩を踏み出すという意味合いなのかなと感じました。

個人的にはダイジンの扱いが酷すぎて悲しかったです。
子猫の姿や幼い声(←めっちゃ可愛いです)が表しているように、ダイジンはおそらく要石になってさほど時が経っていないのだと思います。
与えられた役割を放棄することは良くないことかもしれないけれど、草太が行ったあの寒くて寂しい場所が要石としての居るべき場所なのだとするならば、そこに戻れ戻れと一方的に強要するのはとても酷なことだと感じました。
せめて一言、優しい言葉や労いの言葉があったら印象が違ったかもしれません。
人々から忘れ去られたあんなに寂しいところにこれからずっと一人でひっそりと立ち続けるのかと思うととても悲しい気持ちになりました。
最近愛猫を亡くしたばかりなので、余計に感情移入しすぎてしまったようです。
せめてあの子の近くにサダイジンが寄り添ってくれていたらいいなぁ。
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