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エンパイア・オブ・ライトのmiiのレビュー・感想・評価

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)
3.8
これも「ボーンズ アンド オール」と同様に
生きづらさが描かれていた。

眼の前が海で 海岸線に建つエンパイアシネマで働くヒラリー(オリヴィア・コールマン)は
恋人も家族も居ない孤独な中年女性。
黒人の青年スティーヴン(マイケル・ウォード)が新しくシネマのスタッフとして加わり
今は開放されていない 海を望める寂れた上階で
秘密の愛を育みます。

ヒラリーは上司から性処理の道具ように扱われていて
スティーヴンはひどい黒人差別を受けている。
そして 2人は親子ほど歳が離れている関係。
皆が生きづらさを抱えながら 人生を歩んでいる。

シネマで働きながら 映画を観た事がなかったヒラリーが
初めて映画を観る事ができた時。
それは 言葉の交わさずにスティーヴンの母親と手を繋ぎ 人の温もりを感じられた時。

ヒラリーとスティーヴンが羽が傷付いて飛べない鳩を介抱した時に感じたのも
温もり。

彼女が観た作品は ピーター・セラーズの「チャンス」です。
「人生とは···心の在り方だ」と締め括られています。
その日の夜に合わせて鑑賞したのですが
この作品を紹介して下さり 出会えた事も 収穫でした。

サム・メンデスのしっとりとした映画愛。
様々な想いを抱えていて 俯いて歩いていても
目を見上げると そこに 映画館がある。
笑ったり泣いたり 皆が様々な心を持ちながら劇場に足を運び
心をリセットする空間が そこにはあります。

暗い試写室でのドラマは 人生の光と闇にもなぞらえられる。
決して押し付けがましくない ほのかな「温もり」として届けてくれる本作の映画愛は
先日の「バビロン」よりも響きました。

そして 作品を見終わった後のエンドクレジットの音楽が 極上のものだったわ。
余韻がとても心地よかった。
mii

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