岩嵜修平

ティルの岩嵜修平のレビュー・感想・評価

ティル(2022年製作の映画)
3.7
名前は知っていても起こったこととその後のことをはっきりとは知らなかったエメット・ティル事件を真正面から描いた映画。彼がどんな少年だったか、なぜ都市たるシカゴからミシシッピの田舎に行ったか、当時から都市にもあり、南部の田舎ではより悪質だった黒人差別の現実。眼差さなくては。

残された映像や写真は少なく、その多くを遺族を中心とした周辺の人物の記憶に頼っているので、前半は美化している可能性もあるが、それでも、起きた事実と、その後の運動、そして裁判結果などは間違いない訳で、改めて、アメリカという国に残る問題を考えさせられる。根っこまで染みついた差別意識。

序盤の車中のカメラワークなど、光るシーンも多く、扱いの難しい硬派な映画を2時間しっかり楽しめる映画に仕上げた1985年生まれのシノニエ・チュクウ監督、確かな力量を感じたし、こういう監督にMCU作品みたいな社会派ヒーロー映画を作って欲しいとも思う。主演のダニエル・デッドワイラーも良かった。
岩嵜修平

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