岩嵜修平

オッペンハイマーの岩嵜修平のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.9
【2回目:DolbyCinema字幕】
IMAX以外でも映画としての魅力は全く損なわれなかったし、2回目を観てこそ作品として完成した感。初見では理解しきれなかった箇所もスッと入って来て、改めて編集の上手さとカメラワークの上手さと役者陣の演技の凄さを実感。実験シーンの轟音は流石のDolby。

【1回目:IMAXレーザーGT】
圧巻。本作をこれだけ複雑な気持ちで観られるのは日本人だけなのでは。観られて良かったし、一つの世界最先端の映画であることは間違いない。個人的にはアメリカ政府に対する痛烈な批判とも受け取れたし、当時の日本政府への怒りも感じたので、まずは見るべし。

ノーラン独特の編集(3つの時間軸を並行して見せる意味がある)と切り返しのテンポで、序盤は付いていくのがやっと、所々セリフを聴き逃してしまったが、慣れてくると目が離せなくなる。フルIMAXだと、会話の応酬の中に入り込む感覚に。脳内に思考が流れ込んでくる。現実では見えないものが見られる。

オッペンハイマー自身の描写も複雑そのもので、安易な判断を許さない。研究者として、責任者として、夫として、元婚約者として、それぞれに違った側面が見えてくる。話の流れ自体はギリギリ追えるが、理解できているかどうか。登場人物もザックリと予習して臨んだが、現実で何をしたかは後付けで把握。

ホイテ・ヴァン・ホイテマの剛腕撮影とルドウィグ・ゴランソンの轟音が最大限に生きるのは、原爆実験シーン。あの30秒の緊張感は、近年稀に見るものだった。そして、あの後の歓喜に対する複雑な感情。日本人としては嬉しい瞬間が1秒も無いのに、映画に対しては興奮してしまっている。映画ならでは。

個人的にはノーランでは『インセプション』『インターステラー』『ダークナイト』がベスト3なので、『ダンケルク』などの実話路線や、『TENET』などのガチ路線はあまり好ましくなく、『オッペンハイマー』でオスカー取れて大金稼いだ以上は、好きな小作を作りまくって欲しい。これ以上の大作はいらん。
岩嵜修平

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