三角

TAR/ターの三角のレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
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気に入ったが、やはり映画は最高の瞬間のためにあって欲しい…と思っているのに…性懲りも無くこのような映画を観に劇場に吸い込まれていってしまう。なぜならケイトブランシェット様が観たかったからに違いないが。
ジョーカーのフォロワー作品なんだろうなと想像していた。観てみると案外そうでもなくて、しかし私がジョーカーに似ていると感じたスペンサーには似ていた気がする。もう一つ近いと感じたのはザ・メニュー。とりあえずこのような作品の宣伝文句に「狂気」ってつけるのはもうやめてください金輪際、二度と。

いかにこの社会や文明が胡乱であるかということだと思った。狂っているのは世界の方であってリディア・ターはその世界に適応して仕事をこなしていただけだと思う。でもその場所自体が胡乱なんだから一度身を持ち崩したらもう仕方ないよ...て話だと思う。
彼女は善人でも悪人でもない。名声相応の虚栄心はあるが不正を働いている訳でもなし。最悪なことが起これば取り乱すがそりゃあみんな...そうじゃん、過剰に情緒不安定でもない。
西洋の音楽に全く明るくないのでインタビューとか講義のシーンではほぼ何言ってんのかわかんなかったが、このわかんないだろ?感は狙って作られてたと思うし...ただ経歴とか発言に私すら?と思うほどシュールなところがあったりする。そういうのは笑うところなんだろうけれど...マジで音楽のこと知らなすぎてわからんになった。制作者のわかんないだろ?っていう目配せだけはわかる。ハイ。わかりません。

クラシック音楽とか分子ガストロノミーとか難解度とチケット料金が比例していく世界ってなんなんですか!でもそれら本来的には価値あるもののはずじゃないんですか!の葛藤。
B級感を売りにして内容も相応に平明で稚拙だったザ・メニューよりは遥かに好きですけど。
有史以来の文明なんて往々にして胡乱じゃんと思うのはわかる...様々な搾取の上で偏った一握りの人間が作ったものでしかなく...しかし、美しいものは美しいじゃんという気持ちに引き裂かれているから、いつも。
わかるけど流石に人を信じられなすぎでは...とも思ってもしまった。...味方になってくれる他人が一人もおらんのはなんでや...と思うんだけど。そんなに相互扶助が破壊されてんですか!?西洋のエリート世界...

ターは数少ない女性の指揮者であり、その上典型的なレズビアンである。視聴の妨げになるような描写はなかったと思うしブランシェット様がサマになりすぎててまあ…ありがとう!とも思うんですけどそうは言っても悪いレズビアン描写に堕ちとらんか〜?とは思った。ターの危機に対処しない妻、レズビアンカップルには連帯感がないとでも言うのか。それなら夫に去られる異性愛者でもよかったんじゃないのかな...ブランシェット様がクィアに人気とはいえ彼女は夫がいる女性であるわけだし…レズビアンの真っ当な表象もたりてないとはいえ"わざわざ"じゃない⁉︎と思ってしまう。女女女ばっかり嫉妬!のシーン、まあ好きですが、別にバイセクシャルで男女入り混じっててもいいのにな、男性の監督がとる映画で描かれる追い詰められるレズビアン。問題の他責化じゃないんかと思ってしまう。
つーかクラシック音楽界の指揮者っていうのも既に他責だと思うよ、お前たちの映画の世界を舞台に撮ったらどうなんですか?とかスグ思ってしまうけど、映画の絵として良いから...良いよ!(良いよ!)

※ネタバレ
最後アジアにたどり着くのも西洋中心〜...という驕りを感じるけどまあオーケストラが西洋が発祥、中心なんだからそうだよね、と譲れる。西洋中心〜...とは思うが。この西洋中心〜すら“やってる”感あるんだよな〜地獄の黙示録の生き残りのワニのくだりとか...
てか魂がSNSの形になっているってディスのセリフあったよね?思い出したい。
三角

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