けまろう

TAR/ターのけまろうのネタバレレビュー・内容・結末

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

『TAR』鑑賞。めちゃめちゃ面白かったしケイト・ブランシェットの化け物じみた演技に圧倒された。冒頭、ベルリンフィルの常任指揮者に任命されたリディア・ターへのインタビューシーンから始まる。性質上女性指揮者の旗手としても世間からは期待を寄せられていた。同時にレズビアンでもあった彼女は自分の秘書として若い女性指揮者フランチェスカを起用しており、パートナーに近い存在として囲っているとも噂されていた。そんな中、彼女の元教え子クリスタが自殺。教えているスクールでも生徒に対するパワハラを疑われ社会的地位を失っていく。ターは気に入った若い指揮者に自分と寝ることを強要し、要求に応えない指揮者にはあらゆるオーケストラ団体にネガティヴキャンペーンを展開、挙句の果てにクリスタは自殺を図ったのだった。フランチェスカの裏切りもあり全貌が明るみとなりターはヨーロッパの音楽シーンから姿を消した。世間からの高い評価を得てウーマンパワーの象徴として祭り上げられていたターだったが、蓋を開けてみると中身は傲慢で利己的なミソジニストだったのだ。表面的フェミニストと内面的ミソジニストの稀有な共存だった。
その後、欧州を追い出されたターはフィリピンで指揮の仕事に赴くのだが、本場の欧州に比べるとクラシック音楽への理解がまだまだ発展途上。疲れを癒しにマッサージに向かうがそこは幼女の買春の店だった。ショーケースに並んで座る少女の姿を見て嘔吐くター、そのおぞましい光景こそ自らが欧州でしていた非道なのだと理解したのだろうか、或いは自らの養女を重ねたのだろうか。ラストシーン、ターが神妙な面持ちで指揮を振るとゲーム音楽が始まり、コスプレをした観客たちが映されて幕を閉じる。ヨーロッパで栄華を極めた指揮者の姿はそこにはなかった。
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