おばけシューター

TAR/ターのおばけシューターのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
3.9
くんにちわ
たぶん半年ぶりの更新です。しれっ

映画は普通に観ていたのですが、風水的に今年の後半は文章を書かない方が良い、書いたら爪から毛が生えるとのことで控えていましたが、つい書いてしまいました。爪毛くらいなんだ

そんなわけでクラシックの王女ターちゃんことTARの感想です。観る前はなんだか難解そうと思ってた本作ですが、実際は基本的なストーリーはかなり理解しやすく、とりわけ人の感情が動くシークエンスは必ずそれが示されます。しかし、説明しないところは本当に説明が無く(幽霊を示唆するような部分やエンディング等)極端な作りになっており、更にはその構造が問題提起やテーマ性を却って浮き上がらせており割とうまくいってるのかな。


以下、具体的な内容に触れます。

一番好きで、最も心を揺さぶられたシーンは、クライマックスのポンコツ指揮者ボコ殴りパートなんですが、あそこがTARの人物像の本質をはっきり示しています。
つまり、彼女を批判したり利用したり傷つけた人は多くいましたが、最も許せなかったのは自分が仕上げたスコアをレベルの低い指揮で台無しにされたことなんですよね。
ここに、彼女のことを憎めないプロフェッショナルとしての崇高さを感じるわけです。

冒頭のDeep Forestっぽいイントロから続くインタビューの時点から(TEDとかにめっちゃいそうすぎて笑う)、TARはかなり自己プロデュースを意識して演出していることが度々描かれ、また人間性に問題もありました。(ついでに字幕にも問題がありました。吾輩とか言い出しそうで怖かった。)
それでもやはり敬意を感じるのは、繰り返されるリハーサルのシーンに加え先述のシーンが存在するため。狂気的なほどのプロ意識には、やはり憧れるものがありますね。そしてリハーサルシーンの迫力は繰り返し見たくなる素晴らしさがある。

久しぶりに更新したのは、これを文字に起こしたかったというのもありますが、もう一つ理由があります。

中盤、ランニング中に悲鳴が聞こえてきますが、この音声はブレアウィッチプロジェクトのラストシーンからの引用です。
なんと、、偶然にも本作を観る2日前に、久しぶりにブレアウィッチプロジェクト観たばかりだったたんですよ私!!
一昨日に聞いたヘザーの悲鳴が別の映画でまた聞こえてきた恐怖!本当にゾッとした。世界トップティアに怖い悲鳴だからなあれ。これもうブレアウィッチの感想だな。

そんで間違いなく予想できた人は0人のラストシーン。
これ、モンスターハンターなんですね。ぽいなーとは思ってたんですが。
ここが一番感想が割れるところと思います。私も最初の印象では、こんなコスプレ会場でゲーム音楽の指揮をするまでになってしまったと受け取った。でも繰り返し見てるうちにそうでは無いと感じるようになった。
演奏が始まってラストカット映される人外ばかりの観客、誰1人例外なくステージを真剣に見つめてるんですよね。
これってつまり、TARは自己表現や自己満足のために演奏を完成させることから、観客を感動させることに態度を変化させたということなのではないでしょうか。先述の通りプロフェッショナルを徹底していた彼女に、落ちぶれたラストが待っているなんてどうにも考えにくいんですよね。

ラストシーンではマイクが地下でカメラを落としもう一つのカメラの映像に切り替わりますが、ヘザーの悲鳴が遠くから聞こえるということはカメラを持っていたのは他の誰かということになります。最後に撮されたのは壁に向かって佇むジョッシュでしたが、これは魔女伝説にある描写と共通します。さて、あのときカメラを持っていたのは…この不確定要素ばかりで色々と想像してしまう構成こそ、あの作品が持つ恐怖の本懐で
あっ、腕が勝手にブレアウィッチプロジェクトの感想書いてた。悲鳴が鳴り止まないよ〜〜

おわり