おばけシューター

アンテベラムのおばけシューターのレビュー・感想・評価

アンテベラム(2020年製作の映画)
4.0
おばんちは。

先程初めてグランドシネマサンシャインの日本最大IMAX観てきました。NOPE再上映(笑)またかっていう
マジで視界が全部映画になりますね。普段は、普通のでいいかな。2700円もするし。

それで遅ればせながら本作を年末に鑑賞なんですが、スゴかった!未見の方は情報入れずにとりあえず観ることをおすすめするラムよ…


本編、奴隷の生活がワンカットで映されますがここの生々しさと説得力の強さがいきなり強烈で早速構えるわけですが、男性の奴隷につけられた首輪をみて授業で習ったことを思い出す。「奴隷に付ける鈴が3つなのは、2つを手で抑えてもひとつは鳴ってしまうから」こういった道徳なき合理性は感情的な悪意よりも恐ろしく映るが、人間性が欠如し過ぎていて現実感がないような、奇妙な気持ちになる。


で、以下内容というか核心に触ります。野暮ですがだって語りたいから



物語後半で、南北戦争の時代に存在しえないスマホの着信音が鳴りこの映画の構造が明らかとなるんですが、時代に合わない飛行機の存在や収穫した側から燃やされる綿花など、やはり最初から違和感はあったわけです。それを大胆に配置することで却って見逃してしまうような構造が巧い。

結局あのプラントの運営は、白人至上主義の政治家によるものだったわけですが、冒頭の首輪を付けられた男性が教授と呼ばれてたり活動家である主人公をターゲットにしていたことから目的は明らかです。
デントンはあの土地を所有しており南北戦争の記念公園としておきながら、もしかするとかつての実際のプラントだった場所をあのような形で再利用していると考えると、より一層邪悪さを感じます。ここも先述の道徳なき合理性と言える部分でしょうか。

で、語りたかったのは、とにかくアガるラストシーン!
アガるったらアガる!!
南北戦争(の再現)真っ只中を馬で駆け抜けていくという絵だけでも爽快なカットですが、このシーンの意味は綿花プラントでの奴隷生活から現代へ脱却するという、言ってしまえばただそれだけのものです。
素晴らしいのは、ここの演出の方法です。

この作品はSFやファンタジーではないにも関わらず、奴隷時代から戦争、そして現代へと時空を駆け抜けるタイムスリップのように描かれます。
そして南北戦争の再現をする場所として設定することで、イメージ映像や夢ではなく実際に起きている舞台上でそれが行われるという事!
戦争をあそこまでリアルに再現するという記念公園も、そもそも現代で奴隷プラントをうんえいす運営することもムリがあると言えばそうですが、実際の舞台を使ってあのような演出をするというのは他に例が思いつかず、巧であることは間違いないでしょう。
そして「どや!」と聞こえてきそうな最後のタイトル、そのテンションのままついつい追加してしまった不要なCパートなど制作側からも華麗に収まったラストカットに抑えられない気持ちを勝手に感じる次第でした。
大体そんな感じ。

おわり