ねーね

TAR/ターのねーねのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
3.8
とにかくケイト・ブランシェットが凄まじいの一言に尽きる。
リディア・ターという人間がほんとうにそこに存在しているかのような圧倒的リアリティと説得力、力強さ。
長尺の映画にもかかわらず、吸い込まれるようにして150分が過ぎていったのは彼女の功績に他ならない。

私はクラシック音楽が好きで、指揮者の重要性や偉大さもよく知っているつもりだ。
指揮者にはある程度、その空間を巻き込むパワーが必要とされる。
しかし彼女のような「のめりこみ型」の人間は才能に恵まれすぎているがために、心も身体も音楽に支配されて、周りの一般庶民からは到底理解されがたい存在になってしまうかもしれない。
実際どこまでホントでどこまでが嘘かなんて、描かれている断片だけでは判断できないけど、一度得た大きな名声も、たったひとつのスキャンダルでこうも一瞬で崩れ落ちてしまうのはどの国も同じか。(規模は違えど、最近も某吉本の事件があったなと思いだしてしまう)
彼女の音楽に向き合う真摯な気持ちに嘘はないとわかっているからこそ、その情熱ゆえに誤解が空回りしていく様子は見ていてつらかった。
最後オルガにすらフラれてしまうシーンがいちばん残酷だと思う。

オケをひとつにまとめる指揮者は一見中央で華やかに目立つポジションに見えるが、実はもっとも孤独な人間なのかもしれないなと感じる。
とはいえラストはある意味ハッピーエンドというか、必ずしも世界的オケで指揮をふるうことだけが音楽ではないよねという。
ターには幸せになってほしい。
ねーね

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