モリコーネって、名前はよく聞くけれどあまり知らないなあ、と思ったし、監督が『ニューシネマ・パラダイス』トルナトーレなのであまり気が進まなかったのですが、付き合いで劇場鑑賞しました。音響もよく、快適な環境でした。
膨大な映画のフッテージとモリコーネ本人や関係者へのインタビュー映像からなる映画でしたが、結構敢えて避けてきたような映画が多く、知らないのも当然かな、と思いました。
取り上げられた映画では『ニューシネマ・パラダイス』より前のイタリア映画で日本で公開されてなさそなものに面白そうなものが多く、60年台のイタリア映画って面白そうだな、と思いました。見たことのある映画で好きなのは『アルジェの戦い』と『天国の日々』ぐらいかな?
取り上げられていたリリアーナ・カヴァーニの映画とか、同時に音をつけていた別の監督の歴史物とか、マルコ・ベロッキオの初期の映画とか、可能ならみてみたいと思った。(べロッキオは好きなのですが、初期の映画にしか関わってないのかしらん?)
あと、『続・夕陽のガンマン』も。
真面目な性格で映画を把握する力は強い、ということですが、いわゆる巨匠というような人の映画の音はあまりつけていないという印象です。
意外に暴力的な映画やホラーが多く、20世紀の作曲家といった感じでしょうか?
クラッシクの作曲家として優秀な成績で音楽院を出たものの、現代音楽の作曲家としての活動を続ける傍ら、生活のためにRCAと契約して映画音楽の編曲からこの道に入ったとか。この人の仕事で一番面白いのは多分現代音楽なんだろうな、と思った。
作曲家としては素晴らしいんだろうな、と納得できましたが、一時やめようと思った映画音楽に帰ってきたきっかけが、ローランド・ジョフィの『ミッション』とかトルナトーレの『ニュー・シネマ・パラダイス』というのにはちょっとう〜ん、となってしまった。なんだろ、個人的にはよく理解できない感性です。その前までは結構感心してみていたんですが・・・歳とって保守的になったとか、成功したので守りに入ったか、もしくは元々キリスト教右派的傾向の人だったのか?
アメリカ映画関連ではデ・パルマの映画の話が面白く、みてみたいと思った。
ちょっと気になったのが3拍子を4拍子に当てはめる作曲法の話で、おんなじ話題、『RRR』がらみとか『響け!情熱のムリダンガム』で出てこなかったかしらん。ひょっとして南インドの古典音楽だと一般的な手法なのかしら?
この映画を見た限りでは、引用された映画と映画音楽の関係が全てハッピーでうまくいっている、素晴らしい、というように思えてしまうのですが、何せ見ていない映画が大半である上、見たことのある数少ない映画で、音が素晴らしいとまでいかなくても鑑賞の邪魔にならなかったのは『アルジェの戦い』と『天国の日々』ぐらいなのでスコアは無しにしておきます。
なんといっても監督はトルナトーレなので、フッテージを引っ張ってくるセンスは一流でしょうから。
(以下ネタバレ注意)
作品内では映画音楽の地位が低く、クラッシック音楽界では認められなかった、とありましたが、初期は契約の関係から、のちには映画界の諸事情から、芸術的と一般的に認められるような映画の作曲には呼ばれにくかったというのが真相では?
マルコ・べロッキオの初期の映画に関わっていることを誇らしげに語っていたことや、『天地創造』の作曲を契約の関係で断念せざるを得なかったこと、盟友のセルジオ・レオーネが撮った芸術的な大作の音楽を担当したことで初めて音楽院の関係者からも認められた、ということなどから、映画音楽そのものというよりは関わる作品の質がエロ・グロ・ナンセンスの傾向が強い大衆的なものが大半かつ成功しすぎたので、嫉妬もあり芸術家の仕事として認められにくかった、ということなんだろうと思いました。
アカデミー賞に関しては対抗馬を見れば数合わせでのノミネートが大半だったのでは?と思いました。音楽が良くても映画の評価が高くなければ受賞は難しいでしょうし。この辺はもっとサラッと流して欲しかったところ。