ノラネコの呑んで観るシネマ

神々の山嶺のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

神々の山嶺(2021年製作の映画)
4.5
夢枕獏と谷口ジローによる山岳アドベンチャーの傑作を、フランスでアニメーション映画化した作品。
以前日本で実写化されているので、2度目の映画化だが、ぶっちゃけ遥かに素晴らしい仕上がりだ。
1924年にエベレストで遭難死したマロリーのカメラが、マクガフィン的に使われ、カメラを持つ消えた登山家の羽生を追って、山岳カメラマンの深町がエベレストにたどり着く。
終わってみれば、「なぜ登るのか?」と問われたマロリーの残した、余りにも有名な言葉「Because it's there.」をそのまま表現した様な、どストレートな作品なのだが、この言葉に説得力を与える、ボリュームたっぷりのクライミング描写が圧巻だ。
もちろん絵なんだけど、下手な山岳ドキュメンタリー顔負けの迫力。
なぜ登るのかって?そりゃこんな荘厳な世界を一度でも見たら、取り憑かれてしまうでしょ、と山は素人ながら思わされる。
いわゆる日本のアニメーションの絵柄とは違うし、60年代の遭難事故を伝える新聞記事の見出に、なぜか3.11の見出しが使われていたり、細かなミステークはあるものの、60年代から90年代に至る日本の描写もかなり正確に再現されている。
原作ファンも納得の出来だ。