いやあ、マジでリアルに皆ズビズビ言うもんなんだね。
あちこちでこんなに啜り泣きを聞いたの今回が初めてかもしれない。
ところで、この手の映画が観客の予想を裏切るのは極めて難しい。
というか無理だ。
何故なら、結末は誰もが分かりきった"予定調和"でしかないからだ。
ましてや、今作の売りは人命救助を"死亡者0"で成し遂げる事にあるのだから、この時点でどのような終わり方をするのかは観る前から既に決まっている。
その上で、誰かが最後に不幸を背負うのもセオリーからは大きく外れる。
ともすれば、この映画の行き着く先は初めから全員が救われるハッピーエンドしかあり得ないのだ。
だがしかし、だからこその逆転の発想、"悪魔の方程式"を成り立たせる事も出来るというもの。
そうなのだ。
どうせ誰も死なないと分かっているなら、逆説的に言えばどれだけ"死ぬほど追い詰めても"なんら問題はないのである。
今作は、まさにそれを体現するような作品となっている。
とにかく、死なずに最後には全員笑ってりゃそれってハッピーエンドでしょ?とでも言いたげに、マジで地獄の責苦のような試練が次々と襲いくる今作。
ケツが分かりきってるなら、中腹で予測不能にさせるしか術はないのは理解するが、それにしてもちょっとやりすぎ。
いや、褒めてるんだよ?
自己犠牲の精神を極めし男「喜多見先生」を追い詰めるにはこのくらいやらなきゃダメだもんね。
火で熱され黒煙が立ち込めてる中、地上から70階まで非常階段を全力ダッシュさせたかと思えば、救助者をお姫様抱っこしたまま今度は下らされ、そしてまた上らされてを見させられてるだけでも、もう心臓破裂すんじゃねえのってくらい疲労困憊なのが伝わってくるし、どんどん状況が悪くなってどんどん痛め付けられて、めちゃめちゃ爆発に巻き込まれていく中、それでも誰も死んでないから最早ファンタジーなんだけど、それでもピンチのレパートリーは多彩だから許せてしまう。
だって、その演出でずーっと緊迫感MAXだったのなら、それは製作者の意図するところなんだからまさに思う壺だろう。
今作は、喜多見先生がいつにも増してあまりに超人的と言わざるを得ないが、スペクタルとしては息をのむ展開をこれでもかと味わえる。
なにせ、そんな超人がめちゃくちゃピンチになるのだから、どれだけクライシスな状況かは説明しなくても見てれば分かるから。
そして、どれだけギリギリのシチュエーションでも、画面がスローモーションになった瞬間、いつも絶妙に遅れてやってくる助っ人が登場すれば、その場はまるっと万事解決!
だって、原則として誰も死んだら駄目だからね。
「千住さん」なんて、毎度毎度よくもまあ都合よく駆けつけてくれるもんだよ全く。
千住さんがいれば基本どこだろうと安心ですわ。
リリーフとして優秀過ぎるだろマジで。
そんで、一番おいしいところは必ず「音羽先生」が掻っ攫っていく。
ただ、あのタイミングでの演説はちょっとそんな事言ってる場合じゃなくね?とは思ったが、それもひっくるめてこれぞまさしく「 MER」の様式美である。
あと「YOKOHAMA MER」にも、喜多見先生に感化されて最後はもっと危険地帯に飛び込んで行って欲しかったな。
負傷した消防隊員が、今までぶっ倒れてたのが嘘みたいに死地に向かう姿とかかなり胸が熱くなったから、Y01の皆も権力に逆らってそれに追従してくれたら超胸熱だった。
やっぱり、自己犠牲って自分がやろうと思うとかなり難しいけど、だからこそ憧れちゃうよなー。
兎にも角にも、これでもかとピンチが詰め込まれまくり、それに立ち向かう姿に感動しまくり、諦めない姿勢に勇気付けられる今作は、GWの鉄板キラーコンテンツとして申し分ない満足度だった。
ちなみに「黒岩勉」脚本繋がりで「マイファミリー」とのコラボがあったから「二宮和也」が出てくるんじゃないかとちょっと期待してしまったが、そこまでサプライズは用意されてなかったか。笑
まあ、総合的にはラストの締めくくりまで完璧なファンムービーだったよ。