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ゴールデンカムイのsanbonのレビュー・感想・評価

ゴールデンカムイ(2024年製作の映画)
3.9
動物の描写が凄い。

今作は、明治後期の雪が吹き荒び大自然が猛威をふるう北海道を舞台に、血も涙も忘れ果てた異常者同士の金塊争奪戦サバイバルが題材という事もあり、そこに住まう野生動物もまた多分に描写されているのが特徴の一つとなっている。

実のところ、今作の製作が発表された際に一番危惧していたのが、この動物のクオリティである。

というのも、今作の雰囲気に近い作品で、僕のレビューの一つにも数えられる、2011年公開の「デンデラ」にも殺人ヒグマが登場し、その凶暴性を克明に描写しているのだが、僕はその際の総評として日本映画が手を出すには10年早かったと評している。

その理由こそがヒグマのクオリティの低さにあり、デンデラに登場するそれに関しては最早CGでもなく、人間感丸出しの着ぐるみで表現されていた事から、同じくヒグマ、ひいてはオオカミなども登場する今作においてはその再現度には大いなる不安しかなかったのだ。

しかし、蓋を開けてみれば日本映画でも類を見ない程のハイクオリティでそのルックは創出されており、当初の不安は見事に杞憂に終わる結果となった。

原作漫画は、特に序盤は主人公一行と動物の絡みが多いという事もあり、この不安を払拭出来た時点で今作の成功は8割決まったも同然である。

「ゴジラ-1.0」のグラフィックがハリウッドにも認められた事もそうだが、ようやく日本も低予算でも見劣りしないCG技術が確立されてきた様な感覚があり、もしかしたら今この時から邦画の未来に確変が巻き起ころうとしているのやもしれないと思うと、ドキが胸胸してくるというものだ。

ちなみに、デンデラの感想にも「あと10年もすれば日本のCG技術でもそれなりに見栄えのするものが作れるだろう」という見立てを書いていたのだが、その読みが今作を以て間違っていなかった事が見事証明され、それを久々に読み返した僕も誰に自慢出来るでもないが、ひっそりと鼻高々である。

また、今作は配役も相当頑張っている。

それこそ軒並み名采配とはなっているのだが、特に「尾形」役の「眞栄田郷敦」と「月島」役の「工藤阿須加」が個人的にはお気に入りで、原作のようなどこか死んだ遠い目の表現が両名とも実に素晴らしく、これが本物の役者なんだなぁと役の憑依具合にとても驚かされた。

ところで、漫画実写化請負人の「山崎賢人」はそろそろ大丈夫なのだろうか。

今作では、極寒極まるロケーションでかなり身体を張ったアクションを披露しているのだが、やはり一作で終わるわけもなく、今作もまたシリーズ化を前提とした映画化のようである。

そうなると、並行して製作が進められている「キングダム」と相まって、めちゃくちゃ身体を酷使してしまわないのだろうか?

キングダムがどこまで映像化するつもりかは分からないが、あっちでは荒野、こっちでは雪山となってくると本当に心身ともにボロボロになってしまいそうで心配だ。

また、ストーリーは原作に忠実ではあるが、その反面やはり矢継ぎ早な展開と言わざるを得ず、区切りの良いところまで描く為に詰め込みまくったなという印象が強かった為、ここをもうすこしテンポを遅めにじっくりとした構成であれば評価ももう少し上振れたものだが、これに関しては公式が「闇鍋スキヤキウエスタン」と評しているほど、原作自体がごちゃごちゃしている分致し方ないとも思うので、脚本家は時間に対する物語の配分には苦心したに違いない。

最後に、今作の主題歌を「ACIDMAN」が担当しているが、これは監督かプロデューサーが彼らのファンなのだろうか?

でなきゃ、今さらこの激渋セレクトにはならんよなぁ。
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