sanbon

マーベルズのsanbonのレビュー・感想・評価

マーベルズ(2023年製作の映画)
3.7
毒にも薬にもならない映画。

この映画、例えるなら水だ。

喉に引っかかる要素が無い代わりに、あっという間に喉元を過ぎてしまい後味も物足りない。

確かに、入れ替わりのギミックは撮影が実に大変そうで目新しく、アイデアとして面白くはあったのだが、果たしてそれを上手く駆使出来ていたかと言われると、物語の重大な局面においてそれが不可欠な役目を担っておらず、実感として今ひとつに感じる。

実際に、斬新なルックにも関わらずこのシーンのこのアクションが良かったというような、印象的なものがあったか思い返すと明確には出てこない。

ただ、なんか入れ替わり自体はおもろかったなーという漠然とした感想しか湧いてこないのだ。

今思えば「MCU」が「フェーズ4」突入以降、ようやくの大々的なクロスオーバー作品として満を持して登場したのが今作というのが、正直言って力不足感が否めない。

ヒーロー中最強という名目だが、その強さがあまり伝わってこない分キャラもあまり立っていない「キャプテン・マーベル」を筆頭に、残りのメイン2人が評判も今ひとつのドラマシリーズからの客演とあっては、それも必然と言わざるを得ないだろう。(ちなみに「ミズ・マーベル」は1話離脱)

特に、今作は女性チームで主役を固めており、それ自体には特段文句などはないのだが、いかんせん「ポリコレ疲れ」を助長している「ディズニー」がそれを制作発表している事実と併せ、今このタイミングを確信的に狙って公開されているという背景が要らぬバイアスをかけてしまっており、それが嫌なノイズを生んでしまっていた事は正直なところある。

反面、作風としてはある種の女子会のような掛け合いがあったり、ミュージカルのような場面を取り入れたりと、いわゆる女の子がレッドをやってもいいよね!をやりたいのかと思いきや、どこか女性らしさ(女性とはこうあるべき)を主張した作りにもなっており、一体どう思われたいのかがちぐはぐに感じるところもあり、思想も一貫出来てないように思う。

その上で「キャロル・ダンヴァース」の苦悩も「モニカ・ランボー」の遺恨も上手く掘り下げられていたとは言い難く、今作のヴィランも存在感が薄め。

「カマラ」は唯一キャラ立ちしていたが、その前段であるドラマ版を普及出来ていないから、愛着としては湧きにくい。

このように、アクションはアイデアまかせ。

ストーリーは取ってつけ。

キャラの印象は薄めという本作。

ヒーロー映画の人気に翳りが見えはじめている現状で、起死回生を図りたいはずの「マーベルスタジオ」が、インパクトが無いうえに思想が見え隠れする作品をこのタイミングで公開したのはどう考えても悪手である。

しかも、この一手の後2024年までの公開作品が「デッド・プール3」のみというのは「ウルヴァリン」が出るとはいえ、いささか荷が重い気がしてならない。

今作のポストクレジットも「ヒュー・ジャックマン」演のウルヴァリンが前段にあっては、サプライズとしての効力はかなり弱めだったと言わざるを得ない。

結果、本当に"つまらなくはない"という感想に終始する映画という印象となった。

余談
ちなみに、なんでポリコレはデブで醜い"男性"は一切蔑ろなのだろうか。

多様性を謳い、努力の跡が見えない弛んだ肉体の女性が独善的な主義主張でミスユニバースに輝けるというのなら、同じ特徴の男性もまた然りだと思うのだが、僕の知る限りポリコレによって美醜に対する意識改革を促されているのは大抵が"女性の場合"による。

何故"イケメン至上主義"だけは、未だに問題視も疑問視もされていないのだろうか。

恐らくそれは、そう言った男性からに限っては「配慮しろ」「差別はやめろ」などという声がそもそもあがっていないからなのだと思う。

そうなると、はなから主体性をもって全方位リカバリーする気のないポリコレ活動とは、結局その程度のものだったのかという意見になってしまう。

声が大きい人を黙らせる為に"致し方なく"やっているだけの活動ならとっととやめてもらいたい。

そんな事を、今作に登場する「パク・ソジュン」を見てふと思ってしまった。(そういった観点からも、今作のポリコレへの訴求力は低い)

まあ、いくら足掻こうがルッキズムとはとどのつまり、より優秀な遺伝子を求める生物としてあるべき正常な反応なのだから、それが当たり前だしそうあるべきという考えは揺るがないのだが、極論それを無視してこのままポリコレを推進していくつもりなら、ゆくゆくはブサイク同士の恋愛映画を作って貰わなければ納得はいかない。
sanbon

sanbon