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Dr.コトー診療所のsanbonのレビュー・感想・評価

Dr.コトー診療所(2022年製作の映画)
3.5
[省エネ版]

実にナンセンスな作品。

もう十分やりきったシリーズを、何故わざわざこの内容で復活させようと思ったのか。

確かに、限界集落の医療を題材として散々擦った出涸らしに、最後残されたものは何かを突き詰めれば、今作の出した答えに辿り着くのだろう。

しかし、視聴者にとってそれは決して見たいものではないという事は分からなかったのだろうか?

言わば「Dr.コトー診療所」とはヒロイックものであり「コトー先生」はヒーローの役目を担っている。

それであれば、今作はそのヒーローの弱体化を見せた作品であり、今までは災害や設備不足などの環境が主な敵だったのに対し、今回はデバフ状態になっている姿が主に描かれるから、当然困難の打破にもカタルシスは存在せず、主人公の苦しむ姿を延々と見せられる事になる分痛々しさだけが感想として残るし、更に問題なのがその悲劇的な姿に涙を誘われない点だ。

また、シリーズの主要キャストも、久々に現れたと思いきや、何やらきな臭い状況に巻き込まれているし、全体を通してやたらと陰鬱なのも気に食わない。

数十年ぶりの新作で、重厚な作品を目指したいのは分かるのだが、重たいエピソードというものをどうやら履き違えて書き下ろしてしまったとしか言いようがない脚本である。

しかも、ラストをああする事によって、本編でやってきた事を見事にちゃぶ台返しして、結局はなんの影響も犠牲もなく幕を下ろすのは、単なる逃げだと思う。

それにより、今まで観せられてたものはなんだったんだという感想にまでなってしまった。

これは、明確に駄作だったと思う。
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