とみやま

ケイコ 目を澄ませてのとみやまのネタバレレビュー・内容・結末

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

その人にはその人なりの人生があって、その人なりの事情がある。その人生同士がクロスして、人生の帰路に立つ人間の物語が緩やかに語られる。しかも、台詞で説明などしないで、だからといって、観ている側に解釈を任せたり突き放したりすることなく物語る。このバランスがすごく良い。どこひとつとっても素晴らしくて、年末に本当にいい映画に出会えた。
岸井ゆきのさんと三浦友和さんの演技がとんでもなく素晴らしかった。その人の人生が垣間見える感じは、これ以上ないんじゃないかというくらい。

ケイコの周りの音の演出も秀逸。ぶつかってきた男が言う「どこ見てんだよ!」のようなノイズも多く聞こえてくるけど、ケイコには聞こえない。けれど、伝えようとしてもうまくいかない場面も散見されて、劇中に出てくる「何をイラついてるか話しても、人はひとりでしょ?」って言葉が突き刺さる。
撮影もすごく良くて、ひとつひとつの映像が少し荒めの質感で、すごく絵になる。特に高架下で電車の光が素早く駆け抜けるシーンが好きだった。

印象的なシーンは挙げたらキリがないんだけど、最後に3試合目の相手と不意に挨拶するところがすごくいい。つなぎを着た格好を見て、最後に少ししか出てこなかったこの人にも、この人なりの人生があるんだな、と思わせられる。すごく良かった。見終わってから、ずっと考えてしまう。
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