このレビューはネタバレを含みます
前の会社で手話サークルに入ってて、耳の聞こえない同僚と知り合うことができた。
もちろん会話は困難だけど、彼女の静けさが好きだった。ただ、コミュニケーションの手段が限られることから、仕事上はきついことも多く、上司からあからさまに嫌味を繰り返し言われたりして、苦労があったよう。
この映画の主人公ケイコが書いてたノートから溢れ出る言葉を聞いて、同僚も心の中に、もっとたくさんの言葉があったんだろうな、と当たり前のことを思った。彼女の静けさは、彼女が静かなのではなく、私がそれを受け止める術(手話)がなかっただけだった。
最後、悩むケイコの前に、通りがかりの対戦相手が挨拶に来てくれた。
二人にしかわからない、けど通じ合う空気が生まれた。
ケイコはボクシングをすることで、トレーナーや対戦相手と強く、リズミカルにコミュニケーションをとって、ときに笑いながら、ときに顔を腫らして、それを楽しんでいた。悟られないよう我慢が必要とも。
目に見えるものや言葉だけで、人の心は判断できないね。