アー君

たまらん坂のアー君のレビュー・感想・評価

たまらん坂(2019年製作の映画)
3.1
RCサクセションは世代的にはもう少し上なんだけど、BUCK-TICKの今井寿氏がユウウツな時に聴くアルバムで「BLUE」を挙げていて、その時に買った事があり「多摩蘭坂」という曲が心に残っていた。

黒井千次の小説は昔何かを読んだような気がするぐらい。このモティーフになった作品は未読である。小説の映像化にはかなり神経を使うとは思う。黒井自身もこの映画に出演をしているが、チャーリー・カウフマンの「アダプテーション」のような可笑しさはみられず、生真面目に物語を描いている印象である。

モノクロームで落ち着いた感じで良かったが、デジタル加工処理なのが少し気にはなった。多摩蘭坂を軸とした物語なのだが、小説と音楽、映画に対しての関係や亡母に対する心象風景が若干ぼやけて見えにくかった。
「ドライブ・マイ・カー」と引き合いにするのはお門違いかもしれないが、あの映画は多言語を取り入れたが、この作品は漢字や平仮名で視覚的には差異がありながらも、同音同義語と異義語もあるが母国語のみの一義である。そのため全体的に奥行きがなかったのは惜しかった。これが戦後の内省的な黒井文学の映像化を意図しているのであれば理解はできる。

最近は洋画だけでなく邦画(アジア系も)にも可能な限り観るようにしている。制作期間の長さにはコロナ禍の影響もあるだろうが、クラウドファンディングを使ったとしても日本映画における厳しさは目に見えてわかる。観てレビューすれば良いというだけでは無責任である事は私自身痛感している。

【↓以下はネタバレ↓】










鑑賞後に従業員ではない方からドアの前で丁寧に挨拶をされましたが、マスクをしていたので分からなくて誰かな? と思いながら映画館を出たが、家路に着いた後に映画館に確認をしたら主演の渡辺雛子さんだった。それがエンドロール後の衝撃的なポストクレジットだった。

[K's cinema 17:10〜]
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