アー君

悪魔のような女のアー君のレビュー・感想・評価

悪魔のような女(1955年製作の映画)
4.0
ヌーヴェル・ヴァーグの始祖と言われている仏のアンリ=ジョルジュ・クルーゾーの1955年に公開されたノワール・サスペンス。

「悪魔のようになるべからず」

本作は監督自らヒッチコックに影響を受けていると公言しており、ニコール(愛人)とクリスティーナ(本妻)による異例の共謀によって起きる駆け引き等があり、よくあるファム・ファタールとは一線を画したサスペンスである。犯行後の殺したはずの夫の行方に翻弄(ほんろう)され最後まで真相がわからず、緻密な共犯トリックが仕掛けらているのが特徴である。

物語における主題が共犯であれば、女性同士の心理状態はとても複雑であるが、一般的な共犯関係における心理状態は、計画的に夫を殺すことによる「結束感」、その後に起きる「罪悪感と葛藤」、それに生じるお互いの「依存関係の破綻」が挙げられる。

序盤の乗用車によって水溜りで壊される船の折り紙、陰影感を使った恐怖心を煽るショット、生徒であるモネの意味深な言葉は暗に示した効果的な演出である。

[↓以下ネタバレの意味も含めてます↓]

校長の妻であるクリスティーナを演じたヴェラ・クルーゾーは私生活では監督ジョルジュ・クルーゾーの妻であるが、ブリジット・バルドー主演「真実」の撮影中に主演女優との関係に悩まされる事となり、皮肉にもホテルで不慮の死を遂げるが、死因にはいくつかの説(心臓発作、自死)があるが真意は不明である。まさに事実は小説より奇なりであろう。(撮影後にB.B.は自殺未遂をする。)

1996年に「Diabolique」という原題(邦題は同じ)でリメイク。シャロン・ストーンとイザベル・アジャーニが出演。(他にもジョルジュ・クルーゾーの映画は1953年「恐怖の報酬」はウィリアム・フリードキンによってリメイクされている。)

[ブルーレイによる購入・視聴]
アー君

アー君