アー君

デューン 砂の惑星PART2のアー君のレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
3.6
周辺からの評価も高く、話題の続編を劇場で鑑賞をしたが、前回は序章で登場人物も説明的な場面が目立ったが、本作はヴィルヌーヴの本領を発揮したのか動きのあるショットがあり、前作を上回る素晴らしい映像世界を堪能できた。

ハルコネン家とアトレイデス家(コリノ家)の抗争も教母(ベネ・ゲゼリット)の優生思想による思惑が絡んでおり、手のひらで踊らされている趣旨を汲み取った。そしてポールとレディ・ジェシカとの母子関係も異様に根深く感じたが、これは普遍的な母性と女たちの争いを描いている。そして今頃になって気づいたことであるが、スパイス(資源)による利害構造はどこか石油利権のようでもあり、砂漠を舞台にしたエキゾチックな雰囲気も相まって、第二次世界大戦以後に起きたアラブ独立闘争を連想させている。フレーメンの救世主であるポール・アトレイデスとオスマン帝国によるアラブ人の反乱を支援した軍人、考古学者であるエドワード・ロレンスの英雄譚にどこかしら似ている。(「アラビアのロレンス」の主人公のモデル)

視覚効果によるスケール感はありながらも、あからさまに CGを使っているのが分かってしまうが、デヴィッド・リンチ版はアナログによる特撮技術においてもリアリティがあり、個人的な嗜好になるが雰囲気も〝露悪的な描写〟が皆無である。そして原作者フランク・ハーバートによる6部作の長編小説なので、映像化をする上で削らなければならない場面はやむを得ないだろうが、ヴィルヌーヴの視覚的演出は玄人以上であるが、基本である起承転結の編集をはじめ端折り方があまり上手ではなく、物語における人間関係が唐突すぎて観ている側が把握しきれずに掴みづらいところがある。

例えば「スター・ウォーズ」はジョージ・ルーカスは最初から映画に落とし込む前提で脚本から「新たなる希望」に着手したが、これはフランク・ハーバートが既に書き下ろした長編小説から脚本へ落とし込む作業は難しいのは理解はできるが、複雑な世界観によるサンドウォームやメランジ(排泄物による物質)との因果関係の深掘りが浅く、政治以外のアラキスにおける食物連鎖や物質循環などにも生態学に着目をして欲しく、描き方が弱かったところが挙げられる。

次作を匂わせている終わり方をしているが、前作同様に興行収益から判断をしているので、どこか曖昧で尻切れトンボ的なエンデイングではあったが、可能であればパート3、4の製作にも着手して頂ければ、原作者が意図しているSFというジャンルを超越した広大な大河ドラマの醍醐味が味わえる筈である。

[イオンシネマ板橋 8:40〜]
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