1947年の戦後間もない頃に公開されたルノワール・サスペンス。フランスの社会情勢と特に刑事がアフリカ系の子供を養子にしているあたりは、南米地域の植民地政策についての政治的背景を読み取ることができる。
[↓以下ネタバレを含む内容がございます↓]
女性写真家であるドラには同性愛的な側面が垣間見るが、後半で彼女がジェニーを精神的な面で愛していることが示唆されている。容疑者であるジェニーを庇うために証拠を隠滅するが、このような描写は、当時(1947年)としては非常に画期的であり、無意識的にクィアに関する表現を取り入れている。
「正直に言うけど、お前には親近感があるよ。」
「どうやら、あんたと私は同じタイプのようだ。」
「女である限りは無理な職業だがね。」
そして刑事とドラの意味深な会話であるが、これは彼女以外にも養子を持つ刑事にもそのような意味を匂わせており、犯人を探すだけの汎用なアリバイ崩しのサスペンスではなく、戦後の政治的な背景と同様に多様性(LGBTQ)を示唆する描写を暗に示しており、それが一般的な評価を高くしている理由ではないだろうか。