すずき

X エックスのすずきのレビュー・感想・評価

X エックス(2022年製作の映画)
3.7
1979年。
ストリッパーのマキシーンは、スターに成り上がる事を夢見ていた。
マキシーンと仕事仲間たちは、ポルノ映画の撮影の仕事を受ける。
撮影するのは映画監督志望の大学生RJとその恋人でアシスタントのロレイン。
彼らは田舎のポツンと一軒家の離れを一晩借りて、ポルノである事は家主に伏せて撮影していた。
家主はハワードとパールという老夫妻だったが、彼らは主人公ら若者たちに対して憎悪と好意、憧れと嫉妬を抱いており…

A24製作のスラッシャーホラー。
「悪魔のいけにえ」のような田舎怖い系のホラー+近年流行りの老人怖い系ホラー。
ゴア要素とびっくり要素もあるけれど、それよりも殺人色情狂老夫妻の気持ち悪さが怖い。
誰もが夢を抱き自由奔放に生きようとするが、ずっとそういられる人はほんの一握りで、そして老いは必ず訪れる。
過去にも、現在にも満足していない老女パールが、かつての自分であるマキシーンを見つめる眼差し…そこに様々な感情が渦巻いていて恐ろしかった。
あとは監督のカット割りやシーン切替の独特のセンスも小洒落てた。

先述の「悪魔のいけにえ」を始めとする、往年の名作ホラーのオマージュも多い。
特に印象的だったのは、パールが馬乗りになって首を滅多刺しにするシーン。
ライティングの色彩や、ナイフの刺し方の機械的な動きが、ダリオ・アルジェント!?と思ったけど、彼の先輩のマリオ・バーヴァ監督オマージュだそうな。惜しい!
他「サイコ」「シャイニング」のオマージュもあり。画面分割シーンは「キャリー等」デ・パルマ監督作品か?
序盤の雰囲気はタランティーノ味を感じたが(車の乗り方とか)、これは作中の時代設定がタランティーノの得意とする年代と同じだけかな。
公式サイトの解説によると、「ブギーナイツ」が元ネタのようだ。なるほど。

驚嘆したのは、主演女優ミア・ゴスの演技力!
なんと、ピチピチギャルのマキシーンと、ヨボヨボババアのパールの、一人二役なのだッ!
これには鑑賞中気付かなかった。
特殊メイクもあるとはいえ、老人の動作や複雑な心理の表現が凄くって、若干19歳とは思えない演技力!
彼女が若き日のパールを演じた前日譚の続編「Pearl パール」、そして再びマキシーンを演じるであろう完結編「MaXXXine(原題)」も楽しみだ。

あとロレインを演じたジェナ・オルテガちゃんも可愛くって、役者としても絶叫クイーンとしても、この先の活躍が楽しみだ。