CINEMAと暮らす

マイ・ブロークン・マリコのCINEMAと暮らすのネタバレレビュー・内容・結末

マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

幼馴染のマリコが何も告げず、自殺したことを機に、シイノはマリコとの関係性を振り返る旅に出る。

マリコは幼少期から父の虐待を受けており、幼馴染のシイノだけが頼りだった。シイノは大人になっても、変わらない関係だと思っていたが、マリコの自殺がシイノの気持ちを大きく揺さぶることになる。

「マリコには自分がついている」と思っていたシイノにとって、この自殺は理解不能の出来事だったと思う。人間の死は突然ではあるけれど、自殺となれば、話が変わってくる。シイノにとって、遺骨になったマリコとの旅は、何も言わずに旅立った親友を探すための旅に思える。

マリコが行きたがっていた、まりがおか岬までの道中、マリコに関する回想がいくつか入る。「シイノが自分から離れるなら死ぬ」「ぶっ壊れてる自分が悪い」と語るマリコは、常に生死を彷徨っていたのだと思う。「どこから直していけばいいのかわからない」という台詞が彼女が思考停止に追い込まれてしまっていることを物語っている。

シイノはマリコのために手を尽くし、ピンチの時にはマリコを支えていた。マリコが「シイノの子どもに産まれたかった」と語るように、2人は家族だった。それでも、マリコは死んでしまった。シイノという家族が居ても、マリコには、生きるための力が足りなかった。

ブラック企業で怒鳴られながらも、なんとか日常を過ごしているシイノと、幼少期から存在を否定され続けたマリコの間には埋めがたい溝がある。お互いが信頼していても、環境の違いから生まれる考え方の違いは簡単に分かり合えるものではない。

マリコは「自分は幸せにはなれない。そう考えた方が楽」とシイノに告げる。虐げられ続けて壊れてしまったマリコの考えを知ったシイノに出来ることはマリコを抱きしめることだった。マリコが独りにならないためには、ずっと抱きしめておくしかなかったのだ。

重たいテーマの割りに、観終わった後にヒーリング効果がある不思議な作品だった。永野芽郁のやんちゃな悪ガキっぽいキャラは新鮮で、今まで見た中で一番叫んでいたように思う。

シイノの原動力になっているマリコの死について
マリコの考え方はネガティブなものであり、受け入れるには若干メンタルが削られる。彼女の考えに対して、色々と反応があるだろう。
ざっくり5パターンくらいで、個人的には③か、極稀に④かもしれない。
①ネガティブすぎ、陰湿だし、人として脆そうだから攻撃しよう
②この人ネガティブだな~、面倒だからあまり関わらないようにしよう
③ん~どうしてそんな考えになるのかな。教えてほしいな
④私も幸せになれない人間だから気持ちわかるよ
⑤ずっとそばにいるよ

⑤を選べる人間は僅かで、"ずっと"の程度も色々で、四六時中一緒に居るレベルは皆無だろう。こう考えるとマリコを救うのはかなり厳しい条件だと考えられる。もし、2人で一緒に住んでいたら死なずに済んだのだろうか。というか死なずに済んでほしい。

思考鍛錬度:13
社会的評価:14
経済的評価:12
独自性:14
普遍性:14
その他:ヒーリング3、永野芽郁2